音せぬ荻

otonenuogi

吹き捨てゝ 過ぎぬる風の 名残まで 音せぬ荻も 秋ぞ悲しき(風雅和歌集:京極為兼)
Fuki sute te suginuru kaze no nagori made oto senu ogi mo aki zo kanashiki (Fuugawakashū:Kyougoku Tamekane)

風にそよぐ葉に秋の気配を感じると詠まれたきた荻(おぎ)。京極為兼(きょうごくためかね)は、先例とは異なる独自な視点で秋を捉えました。為兼は、中世の時代を背景に、純粋な自然観照歌を目指しました。

風に身を委ねていた荻が、風がぴたりと止み、すっと立っています。微動だにしない瞬間、荻の様に風の名残を感じ、静寂さのなかにこそ秋のしみじみとした情趣があると詠みました。静止した荻を「音せぬ荻」と表現し、視覚と聴覚によって秋の静けさを感覚的に印象付けています。対象を凝視し、心を出発点として自然を捉えようとした京極派の為兼らしさが現れています。

音を立てていた風が止み、荻のそよぎが止まった瞬間の動から静への鮮明な対比は、墨の陰影によって表現された墨絵のような世界を感じさせ、幽寂な情趣がいっそう深く漂って感じられます。為兼は、物悲しく思われる秋の静寂さの中に閑寂の美を見出しました。

枯淡で静寂な世界に憧れを持っていた風雅集時代の趣向が反映された一首を書で表しました。

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