心づくしの秋

木の間より もりくる月のかげ見れば 心づくしの 秋は来にけり(古今和歌集:よみ人しらず)
Ko no ma yori mori kuru tsuki no kage mireba kokoro dukushi no aki ha ki ni keri (Kokin Wakashū:Yomibito sirazu)

木の間から洩れる月の光に秋の心情を感じ詠まれた一首。
『古今和歌集』秋上で、立秋、秋風、七夕歌に続き排列されています。一首の前後の排列から、初秋の月に秋の到来を強く印象付けていることが窺えます。

この一首は、「心づくしの秋」というところに、物思いの限りを尽くす季節をしみじみと感じさせます。初秋の月の光は、まだ木の間隠れに射しています。木の間を洩れる月の光は、秋が深くなり木の葉が色づき、落葉して遮るものがなく冴え冴えとした閑寂な冬へと向かうことを予感させます。微妙な季節の移ろいに心を働かせ、「心づくし」の季節と捉えたところに、秋の感傷がしみじみと呼び起こされます。

また、「心づくしの秋」という表現は、『源氏物語』第12帖「須磨」のなかで「須磨には、いとど心づくしの秋風に、海は少し遠けれど」という一節に引用され、名文として読者の心を捉えてきました。都から離れた須磨の地が、四季の中でもいっそう侘しいと感じさせます。

秋の感傷が心に沁み入る一首を書で表しました。

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