(人物制作:岩井昌子 山車・小道具制作:松山祐子)
江戸時代の神田明神の祭礼行列の山車より、「武蔵野」を題材としたものです。人物の制作は、和紙人形作家(駒子の紙人形)岩井昌子氏によるものです。
神田明神の祭礼では、氏子の各町々より趣向を凝らした山車が出されました。祭礼行列を描いた錦絵には、”薄に月”の造り花による山車が複数の町で出されていたのをみかけます。”薄に月”というと「武蔵野」を象徴するイメージとして、古来より親しまれてきました。
武蔵野は 月の入るべき 山もなし 草よりいでて 草にこそ入れ
の歌に代表されるように、「武蔵野」はどこまでも広がる原野の風景に浮かぶ月の名所として、和歌や物語などの文芸、絵画・工芸などの題材として受け継がれてきました。
大型の人形が飾られた華やかな山車が数多く出されるなかで、”薄に月”の侘びた風情は、江戸の地の歴史を感じます。江戸の町はたびたび大火に見舞われました。困難な状況でも祭りの山車を欠かさず、町の再興・繁栄を幕府が開かれる以前の「武蔵野」の風景に込めたとされています。江戸の町を象徴する題材として「武蔵野」のイメージは、江戸の町の人々に受け継がれ、粋な江戸の人々の想いが託されてきたことが窺えます。
画像作品は、山車のテーマを和紙の繊維のきめ細やかさ生かした薄と和紙の抑えた光沢感のある銀の月を取り合わせ、色和紙を生かした傘にあしらいました。
傘を支える柄、山車の車輪を支える軸は木を使っています。紙を幾重にも重ねて表現した牛によって山車のバランスをとり、山車の重さを支えています。人物、牛、祭り囃子の楽器、薄と月の造り花、傘の装飾、山車が一体となって調和するよう、それぞれの細密な表現を実現するための素材や色の選択から始まり、それぞれの和紙の特性を生かして表現しています。
2016年9月2日(金)~10月22日(土)
午前10:00 ~ 午後5:30 ( 日曜・祝日 休館)
お茶の水・おりがみ会館 中2Fギャラリー (https://www.origamikaikan.co.jp/)