雛調度

雛の節句を華やかに引き立てる雛道具。女雛の雛の調度品として、人形の大きさに合わせて作られてきました。

『源氏物語』第7帖「紅葉賀」には、紫の上が幼い頃、人形遊びのための優美で小さな調度が誂えられていたことが以下のように書かれています。

いつしか、雛をし据ゑ(すえ)て、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具(みずしひとよろい)に、品々しつらい据ゑ(すえ)て、また小さき屋ども作り集めて、たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。

紫の上は、早くもお人形を並べ立て、忙しくしておられる。三尺の御厨子(ずし:両開きの扉のある戸棚)一対とお道具類、他に小さな御殿を集めて源氏が差し上げなさったものを、辺り一面に広げて遊んでいらっしゃる。

江戸時代、武家・公家・町家の雛飾りに内裏雛の雛調度が揃えられるようになりました。精巧で華麗な雛調度には、平安時代の雅への憧れと雅なものが吉祥のものであるという近世の志向が現れています。

上段の画像の作品は、茶道具と投扇興(とうせんきょう)の道具すべてが掌に収まるミニチュアサイズで表した一作です。投扇興とは、胡蝶(こちょう)という、いちょうの形の的を台の上に立て、扇を的をめがけて投げ、優劣を競う雅な遊戯です。扇子の長さは3㎝ほどに縮小して表しています。

下段の作品は、箪笥(たんす)・文机・文箱(ふばこ)を桐に鳳凰の文様が刷られた漆塗りの重厚な趣を感じさせる江戸千代紙の質感を生かし、ミニチュアサイズで表した一作です。文箱(ふばこ)の傍らに置かれた、1㎝幅ほどに切った短冊には、和歌( 久かたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ:紀友則 )を手書きしています。箪笥(たんす)は、高さ8㎝、奥行3㎝、幅7㎝ほどの大きさで作成しています。

和紙それぞれの持っている味わい、細やかで多様な形状を自在に表現できる特性を生かし、雛調度を表しました。

“Doll furniture ”

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

たんぽぽひいな

温かで懐かしさを想い起こしてくれる春の小さな草花たち。草花遊びの素材として親しまれてきたタンポポの花を縮小して雛に見立た一作。素朴な タンポポの風情を鮮明な黄色の染色の和紙を生かし、直径2cmほどに縮小して表し、高さ5cmほどの小さなお雛様に仕立てました。
”Hina doll”

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

草雛

春の野に咲くレンゲとタンポポを雛の節句に寄せ、素朴な草雛に見立てた一作。和紙の柔らかな質感と柔らかな色合いより、素朴な野の花の風情を表し、扇子にあしらいました。

”Spring flowers”

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

出展のお知らせ

関山桜

「植物」-草木のある風景-
2026 年3月10日(火)~3月15日(日)
12:00~19:00 (最終日は17:00にて終了)
gallery DAZZLE( 東京 南青山 )https://gallery-dazzle.com/

植物展に参加致します。日本の四季を彩る草花をテーマとした立体・平面による作品を展開してまいります。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

和紙クラフト一日講座「笹百合」

一日講座「笹百合」
2026 年 5月30日(土) / 6月 6日(土)
各日 10:00~12:00
小津和紙 ( 東京日本橋 https://www.ozuwashi.net/ )

夏の野に咲く可憐なササユリ。薄紅色の微かな花色と花の名が表すとおり、すっきりとした笹状の葉は、楚々として山野に咲く姿の優美さを想わせます。涼やかな日本固有のササユリの清楚な佇まいを和紙の柔らかな色合いとしなやかさで表します。作品は、和紙を手折った扇子にあしらい、そのまま飾っていただける形式に一回で仕上げます。

講座のお申し込み・お問い合わせ・変更は、小津和紙文化教室(一日講座のページhttps://www.ozuwashi.net/lectureship_trial.html)までお願い申し上げます。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

松の翠

常盤(ときは)なる 松のみどりも 春来れば 今ひとしほの 色まさりけり(古今和歌集:源宗于)
Tokiha naru matsu no midori mo haru kureba ima hitosihono iro masari keri (kokin Wakashū : Minamoto no muneyuki)

常緑の松の緑も春が来て、さらに緑が色濃く鮮やかに見えると詠まれた一首。
一首の詞書には、「寛平御時后(きさい)の宮の歌合によめる」とあるとおり、三十六歌仙の一人、源宗于( みなもと の むねゆき )は、紀貫之と親交のあった古今時代の歌人です。

宗于(むねゆき)の「松の翠」を詠んだ一首は、『古今和歌集』春歌上で「若草」・「若菜」・「春霞」を歌題とした一群に続き、排列されています。冬の間も緑を保ち、春到来を待っていた松。一首は、春到来の悦びを ” ひとしお ” という詞に込めています。 布に色を染める際、染料の汁に浸す回数を数える一回を” ひとしお ” と数えたことに由来する語源のとおり、布など汁に浸して色を染め上げたように松葉が一際、色鮮やかに輝きが増してみえます。

春ならではの生命の息吹を瑞々しく、格調高く詠まれた一首を書で表しました。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア