和紙人形:washi doll」カテゴリーアーカイブ

「日本のまつり」展より 

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「日本のまつり」展より、江戸時代末期の神田祭 祭礼行列の展示風景です。
神田明神は、徳川2代将軍秀忠の時代に、江戸城の表鬼門を守護するために現在の地に遷座されました。現在の大手町の将門塚付近に創建されたのは、天平2年(730)と奈良時代まで遡ります。

画像は、神田祭の行列より山車の一番、日本橋大伝馬町の「諌鼓鶏(かんこどり)」、「武蔵野」、「石橋(しゃっきょう)」の順に配置したものです。天下泰平を祈願する江戸の祭りとして、3台の山車を選びました。山車それぞれにつきましては、リンク先の記事を参照ください。

江戸幕府の開かれる以前の神田祭では、神事能が主な行事として行われていたと伝えられています。幕府が開かれてからも享保年間に諸事情で断絶するまで続きました。能学の「石橋」を題材とした山車は、神事能の伝統を想い起します。

「日本のまつり」展では、和紙人形作家による日本各地に伝わる祭を題材とした作品が多数、展示されております。会場にてご高覧いただけましたら幸いです。

「日本のまつり」
2016年9月2日(金)~10月22日(土)
午前10:00 ~ 午後5:30 ( 日曜・祝日 休館)
お茶の水・おりがみ会館 中2Fギャラリー 

おりがみ会館(http://www.origamikaikan.co.jp/

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神田祭より 「石橋」

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江戸時代の神田明神の祭礼行列より、能学の「石橋(しゃっきょう)」を題材とした山車を和紙で立体化したものです。「石橋」は、牡丹の花が咲き乱れる石橋を巡り展開される演目です。「石橋」のあらすじは、以下のものです。

寂昭(じゃくしょう)法師が清涼山(せいりょうざん)にやって来てきます。石橋を渡ろうとしたところ、童子が現れて行く手を止め、神仏の加護がなければ渡れるものではないと諫めました。橋の向こうは文殊菩薩の浄土であり、やがてめでたい前兆である奇瑞(きずい)が表れるのでここで待つようにと告げます。まもなく文殊菩薩の使いの獅子が石橋に現れ、咲き乱れる牡丹の花に戯れ泰平の世のめでたさを舞い納め、獅子は獅子の座に帰ります。

画像の作品では、深山幽谷にある「石橋」の架かる清涼山の岩肌を和紙の柔軟性によって凹凸を出しながら表現しました。山の岩肌には、花径を3センチほどに縮小して表した牡丹を植え込みました。石橋の背後には、松と笹、牡丹の植え込みを和紙の薄さと強さ、色合いで表しました。ちぎる、丸める、紙縒る、貼り合わせるなど紙素材ならではの表現を組み込んでいます。

江戸時代の神田祭の山車では、牛が山車を曳きました。牛の表現には、紙を少しずつちぎって粘土のように扱い重ね、骨格を肉付けしていく紙塑(しそ)的な人形の技法で表現しています。牛の毛並みの光沢感は、楮の和紙の持つ風合いによるものです。紙塑的な表現では紙を重ねた分、重くなります。牛の重さと動きによって山車のバランスを保ち、作品全体の調和をとっています。

「日本のまつり」
2016年9月2日(金)~10月22日(土)
午前10:00 ~ 午後5:30 ( 日曜・祝日 休館)
お茶の水・おりがみ会館 中2Fギャラリー 
https://www.origamikaikan.co.jp/

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神田祭より 「武蔵野」

kandasai-16-2(人物制作:岩井昌子 山車・小道具制作:松山祐子)

江戸時代の神田明神の祭礼行列の山車より、「武蔵野」を題材としたものです。人物の制作は、和紙人形作家(駒子の紙人形)岩井昌子氏によるものです。

神田明神の祭礼では、氏子の各町々より趣向を凝らした山車が出されました。祭礼行列を描いた錦絵には、”薄に月”の造り花による山車が複数の町で出されていたのをみかけます。”薄に月”というと「武蔵野」を象徴するイメージとして、古来より親しまれてきました。

武蔵野は 月の入るべき 山もなし 草よりいでて 草にこそ入れ

の歌に代表されるように、「武蔵野」はどこまでも広がる原野の風景に浮かぶ月の名所として、和歌や物語などの文芸、絵画・工芸などの題材として受け継がれてきました。
大型の人形が飾られた華やかな山車が数多く出されるなかで、”薄に月”の侘びた風情は、江戸の地の歴史を感じます。江戸の町はたびたび大火に見舞われました。困難な状況でも祭りの山車を欠かさず、町の再興・繁栄を幕府が開かれる以前の「武蔵野」の風景に込めたとされています。江戸の町を象徴する題材として「武蔵野」のイメージは、江戸の町の人々に受け継がれ、粋な江戸の人々の想いが託されてきたことが窺えます。

画像作品は、山車のテーマを和紙の繊維のきめ細やかさ生かした薄と和紙の抑えた光沢感のある銀の月を取り合わせ、色和紙を生かした傘にあしらいました。
傘を支える柄、山車の車輪を支える軸は木を使っています。紙を幾重にも重ねて表現した牛によって山車のバランスをとり、山車の重さを支えています。人物、牛、祭り囃子の楽器、薄と月の造り花、傘の装飾、山車が一体となって調和するよう、それぞれの細密な表現を実現するための素材や色の選択から始まり、それぞれの和紙の特性を生かして表現しています。

「日本のまつり」
2016年9月2日(金)~10月22日(土)
午前10:00 ~ 午後5:30 ( 日曜・祝日 休館)
お茶の水・おりがみ会館 中2Fギャラリー 
https://www.origamikaikan.co.jp/

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「日本のまつり」

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(人物制作:岩井昌子 山車・小道具制作:松山祐子)

「日本のまつり」
2016年9月2日(金)~10月22日(土)
午前10:00 ~ 午後5:30 ( 日曜・祝日 休館)
お茶の水・おりがみ会館 中2Fギャラリー
 (https://www.origamikaikan.co.jp/

9月2日より、お茶の水 おりがみ会館にて「 日本のまつり」展が始まります。
今回の展示では、和紙人形作家(駒子の紙人形:おりがみ会館講師 )岩井昌子氏と神田祭を題材に共同制作した3台の山車を展示いたします。
人物の制作は、和紙人形作家(駒子の紙人形)岩井昌子氏が担当し、山車とそれを曳く牛、人物の持つ小道具などを私(松山)が担当しました。
制作にあたっては、江戸末期に描かれた「神田明神祭礼絵巻」(住吉内記広定画)をはじめ、神田祭の祭礼行列を題材とした錦絵より取材しました。山車の高さに合わせて人形の寸法を割り出し、山車や人物の半纏など和紙の色合いを活かしております。

神田祭は江戸を代表する祭礼で、日枝神社の山王祭とともに「天下祭り」と称して江戸城内への祭礼行列の巡行も許可され、将軍上覧された盛大なものでした。
画像の作品は、神田祭より山車の一番、日本橋大伝馬町の諌鼓鶏(かんこどり)です。山車の高さ(鶏の尾羽を含め)は50cm弱、人形の高さは10cm程の大きさで制作しております。
鶏の止まっている太鼓を諌鼓(かんこ)といいます。世の中が平安であれば治世を諫めるために鳴らされる諌鼓が鳴ることがなく、鶏も安らかに止まっていられるという、中国の伝説に由来し天下泰平を表しています。

「日本のまつり」展では、館内に和紙人形作家が集い、日本各地に伝わる祭りを題材として制作された作品が多数展示されております。群像ならではの勢いのある作品、作家の個性あふれる多彩な表現を会場にてご高覧いただけましたら幸いです。

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