桜ちり 春のくれ行くもの思ひも 忘られぬべき 山吹の花(玉葉和歌集:藤原俊成)
Sakura chiri haru no kure yuku mono omohi mo wasura renu beki yamabuki no hana
(Gyokuyou Wakashū:Fujiwara no Toshinari)
山吹の花に惜春の思いを託した一首。桜が散り、春が過ぎ去る寂しさを山吹の花が忘れさせてくれます。平安末期を代表する歌人の一人、藤原俊成(ふじわらの としなり)の詠んだ一首は、『玉葉和歌集』春歌 下で「山吹」を歌題に詠まれた中に排列されています。
『玉葉和歌集』は、京極為兼主導で撰定された勅撰集です。為兼は本歌取りや枕詞・縁語・掛詞などの旧来の修辞法に捉われず、”心のままに詠む”ことを理想としました。
『玉葉和歌集』に撰集された俊成の一首は、「暮れ行くもの思ひ」という詞で内に動く心をさらりと託し、春の余情を伝える山吹の優美な風情が心に留まります。しなやかに枝垂れる枝に咲く、色鮮やかな花に寄せた一首を書で表しました。
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