松の翠

常盤(ときは)なる 松のみどりも 春来れば 今ひとしほの 色まさりけり(古今和歌集:源宗于)
Tokiha naru matsu no midori mo haru kureba ima hitosihono iro masari keri (kokin Wakashū : Minamoto no muneyuki)

常緑の松の緑も春が来て、さらに緑が色濃く鮮やかに見えると詠まれた一首。
一首の詞書には、「寛平御時后(きさい)の宮の歌合によめる」とあるとおり、三十六歌仙の一人、源宗于( みなもと の むねゆき )は、紀貫之と親交のあった古今時代の歌人です。

宗于(むねゆき)の「松の翠」を詠んだ一首は、『古今和歌集』春歌上で「若草」・「若菜」・「春霞」を歌題とした一群に続き、排列されています。冬の間も緑を保ち、春到来を待っていた松。一首は、春到来の悦びを ” ひとしお ” という詞に込めています。 布に色を染める際、染料の汁に浸す回数を数える一回を” ひとしお ” と数えたことに由来する語源のとおり、布など汁に浸して色を染め上げたように松葉が一際、色鮮やかに輝きが増してみえます。

春ならではの生命の息吹を瑞々しく、格調高く詠まれた一首を書で表しました。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア