「源氏物語絵巻 第五十帖 東屋」

genji50-s

“Genji Monogatari Emaki no.50 Azumaya” 
京の三条あたりの小さな家で浮舟はひっそり暮らしています。
薫は浮舟の事情を知り、宇治に連れて行こうと浮舟の元を訪れます。
庭は草が生い茂っており、秋の冷たい雨が降り注ぎます。
(12×13.5cm)

大君亡き後、中の君は匂宮に迎えられ京の二条院で暮らしていました。
第四十九帖の宿木で登場した大君・中の君の異母妹である浮舟は中の君の元に預けられていました。
薫との縁談を考える浮舟の母の意向によるものです。
そこで浮舟は匂宮に見初められます。
難は逃れたものの、浮舟の母は三条の小宅へ浮舟を移します。
事情を知った薫は、浮舟を三条の住まいから宇治へ連れ出します。
浮舟は思わぬ成り行きに茫然とするばかりです。
場面は腰掛けて浮舟を待つ薫の前に広がる情景を描きました。
冷たい雨のそぼ降る設定は、宇治行きの結末を暗示するかのように思え、この場面を選びました。

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「源氏物語絵巻 第五十帖 東屋」」への6件のフィードバック

  1. 豆奴

    淡いブルーの背景に黄色い花が映えますね。
    深い紫の額に淡い紫の小花、とても奥行きがあって
    ほんとに源氏物語の映画のワンシーンを見ているようです(^_^)
    雨が涼しげで心地よさを感じつつも、
    物語の心情や不穏な雰囲気が伝わってきますね。

  2. ひろの

    とても美しい作品ですね。
    雨の冷たさが感じられるようです。
    ホントにひとつの物語を見ているような気持ちにさせられます。

  3. ymatsu

    豆奴さん
    ありがとうございます。
    物語の心情や不穏な状況、感じていただけて
    うれしく思います。
    東屋の巻ではこの場面以外には思い浮かびま
    せんでした。
    背景にしたいと思える和紙と出会うまでなかな
    か描けなかったのですが、顔料もよくのってく
    れたので雨を描くことができました。

  4. ymatsu

    ひろのさん
    ありがとうございます。
    秋の季節感と夜、雨模様、暗さの中にも薫や
    浮舟の雅やかな雰囲気を伝える色、というと
    ころが難しいでした。
    荒れた庭でも秋草のたおやかさは優美で儚さ
    が感じられます。
    雨は銀を使ったのですが、冷たさが伝わって
    よかったです。

  5. 瑠奈

    源氏物語の宇治のくだりはとても好きな話です
    作品から薫が秋草の間から浮舟の姿を窺っているようすが伝わってくるようです

  6. ymatsu

    瑠奈さん
    ありがとうございます。
    東屋を描くにあたって蓬生を思い出しました。
    雨上がりですが雨の雫が落ちており、屋敷や庭が
    荒れ果てていても蓬の青々と茂った勢いで明るく
    希望が感じられる場面でした。
    末摘花はその後幸せに暮らせましたし。
    その場面と対比したイメージを持って描きました。
    薫や浮舟の気配、感じていただけてうれしいです。

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