
佐保山の 柞(ははそ)のもみぢ 散りぬべみ 夜さへ見よと 照らす月影 (古今和歌集:よみ人しらず)
Sahoyama no hahaso no momidi chirinubemi yoru sahe miyo to terasu tuki kage ( kokin Wakashū : Yomihitoshirazu )
奈良の佐保山の雑木林の色づく木々の葉。今にも散ってしまいそうなので、夜さえも見よと月影が照らしていると詠まれた一首。一首は、『古今和歌集』秋歌下で「菊」を歌題とした歌に続き、冬を前に「落葉」を歌題とした一群に排列されています。
柞(ははそ)とは、里山の雑木林に林立する、コナラやクヌギなどのドングリのなる落葉高木をいいます。落葉前には黄色、赤褐色、茶褐色など、一葉ごとに色づき加減にも変化に富み、山野を彩り豊かに輝かせます。
雑木林の木々の紅葉が月光に映えて輝きを増し、月も落葉してしまうのを惜しむかのように照らしていると捉えた一首は、自身の紅葉への深い愛惜を月に投影しています。
落葉前の秋の澄んだ冷気の中、一ひと時の里山の煌めきを詠まれた一首を書で表しました。
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