紅白梅雛

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江戸時代に花開いた雛の文化。
簡素な立雛から内裏雛、雛道具、段飾り、御殿のしつらいなど時代が進むにつれて豪華になっていきました。
近世の雛には雅な平安時代、『源氏物語』への憧れが根底にあり、形になって表れています。

花雛は、上巳の節句本来の災厄を祓い、身の穢れを移すため人の身代わりとした形代(かたしろ)としての草雛から発展した女の子の健やかな成長や幸せを願う心、繁栄、再生などの祈りを込めたもの。
花雛本来の祈りを込めた形に草雛から花雛へと進化していく過程で、雅な王朝文化への憧れが加わり洗練されていきました。

先日、泉鏡花の『雛がたり』と花雛の関係について書きました。 (「雛がたり」と花雛)https://washicraft.com/archives/7087
『雛がたり』は、紫の上を連想させる書き出しから始まり、第8帖の「花宴」で朧月夜が「照りもせず、くもりも果てぬ春の夜の・・・」と口ずさんだ歌で終わる展開になっています。
明治の初めに生まれた泉鏡花の『雛がたり』から、雛と『源氏物語』のつながり、江戸時代には『源氏物語』が読本・源氏絵などを通じて広く普及していたことが読み取れます。

『雛がたり』の書き出しに登場する花雛。
桜雛(さくらびな)・柳雛(やなぎびな)から始まります。
花雛というとまず、花菜(菜の花)や桃の花が浮かぶと思います。桜・柳は第一に思い浮かぶ花雛とは思えません。
『源氏物語』のなかで、紫の上が暮らす六条院の春の町の景色と鏡花の懐かしく想う春の景色が桜・柳の雛に重なりました。
紫式部が源氏の邸、六条院を四季の町として構想し、四季の自然の美しさを感じ取ることで人の心を動かし、人の心を穏やかにして人々の間を調和させることを伝えようとした理想を花雛の中に見出しました。

『雛がたり』から連想された紫の上が演出した春の町。
春の町には紅梅、桜、藤、山吹をはじめ、春の草木で華やかに彩られています。
開花の時季のずれを巧みに生かして散ってしまった梢は次の花が隠してしまうように紫の上がしつらえており、いつまでも春がとどまっているかのようです。
なかでも平安時代、紅梅は女性に大変好まれました。紫の上が紅梅に格別の想いを持っていたことが第41帖の「幻」に書かれています。

寒さの残る早春、桜に先駆けて咲く梅は薫り高く雅な趣で春の兆しを伝えてくれます。
凛とした佇まいに気品ある白梅。優美で可憐な紅梅。
紅梅を紫の上、源氏を白梅に見立てました。作品の高さは、白梅の源氏雛が16cmほどです。
手漉和紙の凛とした白色と質感によって祈りを込めた神聖なもの、物語から感じたイメージを表現しました。

”Flower doll”

2015 1/28~2/3
『雅な雛のつどい展』

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