
むら雨の 風にぞなびく あふひ草 向かふ日かげは うすぐもりつつ(壬二集:藤原家隆)
Murasame no kaze nizo nabiku afuhi gusa mukafu hikage ha usugumori tutu
(Minishū:Fujiwara no Ietaka)
村雨を吹き寄せる風に靡く葵草。葵草の花が顔を向けている日の光は雲に覆われて行く、と詠まれた一首。一首を詠んだ藤原家隆(ふいわら の いえたか)は、新古今時代を代表する歌人です。
一首は、『老若五十首歌合』にて「夏」を歌題として詠まれたものです。
「葵草(あおいぐさ)」とは、「立葵(たちあおい)」の古名です。梅雨入りの頃から咲き始め、梅雨の季節の花として古来より親しまれてきました。古くは、「唐葵(からあふひ)」とも呼ばれました。『枕草子』第66段「草は」にて、「唐葵、日の影にしかたひて かたふくこそ、草木といふべくも あらぬ心なれ」と評しているとおり、天に向かって伸びやかに直立した草姿と夏の太陽の光に顔を向け、咲き続ける様が賛美されてきました。
家隆の一首は、雨風を受け、靡く立葵のしなやかな花びらに射していた日の光が弱まり、鮮やかな花色が翳っていく様に梅雨の時節を捉えています。
梅雨時の情趣をたおやかに詠まれた一首を書で表しました。

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