をみなへし

akigiri-1

人の見ることや苦しきをみなへし 秋霧にのみたちかくるらむ(古今和歌集:壬生忠岑)
Hito no miru koto ya kurusiki wominaeshi aki giri ni nomi tachi kakuru ramu
(kokinwakashū:Mibu no Tadamine)

『古今和歌集』の秋部に配列されている歌の詞書には、「朱雀院の女郎花合(をみなへしあはせ)にてよみたてまつりける」とあります。詞書にある「女郎花合(をみなへしあはせ)」とは、オミナエシの花に和歌を添え、花と歌の優劣競い合った歌合(うたあわせ)で、898年に宇多上皇が主催しました。
この歌合には、壬生忠岑(みぶのただみね)をはじめ、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)、藤原興風(ふじわらのおきかぜ)、紀貫之(きのつらゆき)、源宗于(みなもとのむねゆき)、女流歌人の伊勢(いせ)など古今時代を代表する歌人が招かれました。

秋の七草のひとつ、オミナエシ。『万葉集』に撰集された歌が詠まれた上代、女郎(をみな)には若い女性、高貴な女性、佳人の意味を込めていました。『万葉集』の歌にみられるオミナエシを女性に見立てたイメージは、受け継がれていきました。
風になびく姿がたおやかなオミナエシを高貴な女性に見立て、秋霧が隠すという趣向の歌を書と描画で表しました。

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