志賀の浦

siganoura-

志賀の浦や遠ざかりゆく波間より 氷りて出づる有明の月(新古今和歌集:藤原家隆)
Shiga no ura ya tohozakari yuku nami ma yori kohorite iduru ariake no tsuki
(Shinkokin Wakashū:Fujiwara no Ietaka)

志賀は、琵琶湖の西南岸にあたる地名で古来より歌枕として詠まれてきました。志賀にはかつて大津京がありました。謡曲『志賀』の題名にもなっている地名です。

家隆の歌は、詞書に「摂政太政大臣家歌合に、湖上冬月(こじょうとうげつ)」とあり、この歌は歌合で詠まれたもので、次の歌を受けているとされています。

さ夜更くるままにみぎやは凍るらむ 遠ざかりゆく志賀の浦波(後拾遺和歌集:快覚法師)

琵琶湖の岸辺から遠退いた波間から、有明の月が現われる景色を詠っています。
本歌を受けて岸辺が凍りつき、岸辺に打ち寄せているはずの波は遠退いている情景が浮かびます。岸辺が凍りつくほどの凛とした厳寒の風景でありながら、素直で温かい家隆の人柄が偲ばれて余情を感じます。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア