月別アーカイブ: 2016年7月

一日講座のご案内 「秋明菊」

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一日講座 和紙クラフト「秋明菊」

2016年 9月19日(月)敬老の日 10:00~12:00 
小津和紙 ( 東京日本橋 http://www.ozuwashi.net/ ) 
 
秋の情趣を伝えるシュウメイギク。今回は、草丈のあるシュウメイギクの動きを和紙の柔らでしっとりとした風合いと落ち着いた色合いを生かして表します。シンプルな一重の花を簡略化しながら開き方や蕾の大きさの違いを出すことによって、表情豊かなシュウメイギクの風情を伝えてみます。
仕上げた花は、ざっくりとした和紙をまとめて花器に見立てたものにアレンジし、秋を愉しみます。

講座のお申し込み・お問い合わせは、小津和紙 一日体験講座のリンク先 (http://www.ozuwashi.net/lectureship_trial.html) までお願い申し上げます。

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萩の上露

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おくと見る ほどぞはかなき ともすれば 風にみだるヽ 萩のうは露(源氏物語:紫の上)
Oku to miru hodo zo hakanaki tomo sureba kaze ni midaruru hagi no uha tuyu
(genjimonogatari:murasaki no ue)

『源氏物語』第40帖「御法(みのり)」で、秋の夕暮に病で衰えた紫の上が、源氏の見舞いの折に和歌を詠みかわした場面で詠まれた一首。
国宝「源氏物語絵巻」では、源氏が紫の上を見舞う場面で風の吹きすさぶ庭に植えられた秋草を眺めながら和歌を詠みかわした場面が描かれています。萩・桔梗・薄・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)などが野辺に咲いているかのように、庭に取り混ぜられて植えられており、雅な秋の野の美しさが想い起されます。
絵巻では、可憐な秋草が風にしなう描写によって紫の上を失うことを暗示させているとともに、最愛の紫の上を失う源氏の心の内、紫の上の想い、紫の上に付き添う明石中宮の想いを伝えています。秋草は、人事を象徴的に表すものとして文学と関わってきました。

優美で彩り豊かな秋草。秋の七草に数えられている草花は、色や形、花の大きさの変化に富んでいます。秋草は、取り混ぜられることで互いに引き立て合います。
秋草のたおやかさが強調される秋風。秋草それぞれの描く線は、秋風によって乱れることで緊張感を伝えます。脆く、儚いものの持つ美しさを伝える露。露の美しさは、玉にたとえられます。露は、風によって跡形もなく消えゆくものです。
秋草の中でも露を宿した姿が優美な萩に寄せて詠まれた紫の上の最期の一首を書と描画によって表しました。

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あさがほの花

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ありとてもたのむべきかは世の中を 知らする物は朝がほの花(後拾遺和歌集:和泉式部)
Ari tote mo tanomu beki kaha yononaka wo shirasuru mono ha asagaho no hana
(GosyuiWakashū:Izumisikibu)

人の世のはかなさを朝顔の花に寄せて詠まれた和泉式部の一首。和泉式部は、平安中期、紫式部と同時代に活躍した女流歌人です。”はかなさ”をテーマに詠んだ和泉式部が、「はかない花」、「無常感をイメージする花」として「あさがほ」に心を託したものです。
『後拾遺和歌集』には、秋部(上)に排列されています。「あさがほをよめる」との歌の詞書があり、「朝顔」を歌題としていることを伝えています。「朝顔」を題材としたものは和泉式部の一首のみが撰ばれています。「あさがほ」を無常感をイメージする花として表現したのは、前時代の勅撰和歌集の秋歌にはみられないものです。

「朝顔」は、「立秋」から始まる『後拾遺和歌集』秋部(上)のなかでは終盤に位置しており、「女郎花(おみなえし)」と「秋風」の歌題の間に排列されています。和泉式部の歌を挟み、前後に排列されているのは次の2首です。

よそにのみ みつつはゆかし女郎花 をらむ袂(たもと)は 露にぬるとも 
いとどしく なぐさめがたき夕暮に 秋とおぼゆる 風ぞ吹くなる

上記の2首は和泉式部と親交があったとされる、源 道済(みなもとのみちなり)の歌です。道済は、後拾遺集を代表する歌人の一人です。道済の歌の心を受けた趣向の排列から、和泉式部の詠んだ「朝顔」は、秋の”あはれ”を誘う情趣を印象付ける花として認識されていたことが窺えます。

「朝顔」は『万葉集』では、山上憶良(やまのうえのおくら)の歌がよく知られています。

秋の野に 咲きたる花を  指折り(およびをり)  かき数ふれば  七種(ななくさ)の花
  萩の花 尾花葛花 撫子の花  女郎花 また藤袴  朝貌(あさがお)の花

秋の七草とされる花の一つに挙げられた憶良の朝顔は、桔梗、木槿、昼顔など諸説あり、そのなかで桔梗が有力とされています。現代に朝顔と呼ばれている花は、遣唐使によって伝えられたとされています。和泉式部の「朝顔」は、現代の朝顔とされるものなのか、木槿をいうのか、桔梗をいうのか未詳ですが、ここでの「あさがほ」は、儚い花の持つ気品、優美さを感じます。
歌に詠まれた「あさがほ」のイメージを書で表しました。

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