桜色

桜色 のにはの春風 あともなし とはゞ ぞ人の 雪とだに見ん (新古今和歌集:藤原定家)
Sakura iro no niha no haru kaze ato mo nashi tohaba zo hito no yuki to dani min  (Shinkokin Wakashū : Fujiwara no Sadaie)

落花を雪に見立てた趣向の一首。『新古今和歌集』春歌 下に排列された藤原定家の一首は、『古今和歌集』春歌 上に排列されている在原業平の一首を本歌としています。

今日来ずは 明日は雪とぞ 降りなまし 消えずはありとも 花と見ましや

業平の一首は落花を降雪に見立て、「雪となって散ってしまった桜を人は花とみるでしょうか」と雪に見立てることで花盛りの跡形もないものとして表現しました。

定家の一首は、「散った花を人は雪と見てくれるであろうか」と業平が降雪に見立てた趣向を取りつつも、下句で散った花は形あるものとして捉えたことで、上句での「今は形跡もない 桜色に染まった春風」の余韻が心に深く残ります。

形に残らない春風を桜色に捉え、春の余情を繊細な感覚表現で捉えた一首を書で表しました。

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