みどりなる ひとつ草とぞ 春は見し 秋はいろいろの 花にぞありける(古今和歌集:よみ人しらず)
Midori naru hitotsu kusa tozo haru ha mishi aki ha iroiro no hana ni zo ari keru
( Kokinwakashū:Yomobitosirazu )
春景、秋景それぞれ野辺の草花が織りなす風情の違いを見出し詠まれた一首。一首は『古今和歌集』の秋歌上で「萩」「女郎花」「藤袴」「花薄」「撫子」など、秋草を詠まれた一連の流れの中に排列されています。
一首では、春の野が緑一色のひとつの草として見え、秋になると様々な草花で彩られることに気づき、春秋それぞれの季節を色で捉えました。春の草花は草丈が低く、遠景で見渡した景色は柔らかな若草色が心に留まります。
『古今和歌集』秋歌で取り上げられている萩・女郎花・藤袴・花薄・撫子など、秋に花を咲かせる野草は草丈があり、繊細な小花が集まって咲くものが多く、群生して野辺を彩ります。遠景で見渡すと花の形はぼんやりとして花の色が霞のように辺りを染めて浮かび上がり、艶やかさが心に留まります。
春景の若草色との対比によって秋景の色彩の豊かさを伝えた古歌を書で表しました。
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