風の柵

山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり(古今和歌集:春道列樹)
Yamagaha ni kaze no kaketaru shigarami ha nagaremo ahenu momiji nari keri
(Kokinwakashū:Harumichi no tsura ki)

山中を流れる谷川にとどまる紅葉を柵(しがらみ)に見立て詠まれた一首。一首を詠んだ春道列樹(はるみち の つらき)の歌は、『古今和歌集』秋歌下に撰集され、紅葉の落葉を歌題とした中に排列されています。一首の詞書には「志賀の山越えにて詠める」とあります。

谷川の散紅葉が見立てられた柵(しがらみ)とは、水中に杭を打ち、竹や柴を絡ませ、水をせき止めたり、流れの勢いを弱めたりするものです。一首で詠まれた谷川は、柵(しがらみ)という言葉から流れは緩やかでなく、せきとめるほどに木の葉が留まっていると読み取れます。山を吹き抜ける風によって川面に降りたまった散紅葉は 柵(しがらみ) となり、色鮮やかな晩秋の景が広がります。流れをせきとめる 柵(しがらみ) は、人によって造成されるものでなく、風の力によって破れやすい木の葉を自然にせきとめ、造られたという視点が清新です。山を吹き抜ける風は冷たく、辺りの空気も凛として感じられます。

川面の散紅葉の見立てによって、秋の名残と冬の気配を鮮やかに詠んだ一首を書で表しました。

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