稲葉そよぎて

昨日こそ 早苗(さなえ)とりしか いつのまに 稲葉そよぎて 秋風の吹く(古今和歌集:よみ人しらず)
Kinofu koso sanae torishika itu no ma ni inaba soyogite akikaze no fuku ( kokin Wakashū :yomihito shirazu )

田植えの頃、苗代から早苗を取って田に植えたのは、昨日のことのように思われる。いつの間にか稲葉を秋風が吹いていると詠まれた一首。一首は、『古今和歌集』秋歌上で立秋を題とした2首に続き、秋風を歌題として排列されています。

田植えが終わったばかりの時節は、まだ小さな苗が水を張った田を青々と瑞々しい光景を見せていたことが、昨日のことのように思われ、月日の経つ速さが伝わってきます。秋の気配を秋風により、実りの季節の秋色へと移ろいゆく様を想起させます。一首は、秋風が田園風景の色彩を青々とした瑞々しい風景から、黄金色に色づく稲穂をそよがせる風景へと移ろうことを予感させます。

初秋の田園風景を清々しく簡潔に詠まれた一首を書で表しました。

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