泉鏡花の短編、『雛がたり』に書かれている、桜雛(さくらびな)、柳雛(やなぎびな)、花菜の雛(はななのひな)、桃の花雛(もものはなびな)、白と緋(ひ)と、紫(ゆかり)の色の菫雛(すみれびな)つくし、鼓草(たんぽぽ)の雛から発想を得たものを和紙で雛に表したものを並べてみたものです。
桜雛・柳雛は短冊飾り、花菜の雛・桃も花雛は紙雛(かみひいな)、菫雛は坐雛(すわりびな)、つくし・鼓草(たんぽぽ)の雛は草雛に近い形に表しました。
つくし・鼓草(たんぽぽ)の雛は、草の姿をそのままとどめた形に和紙を使ってまとめたものです。
つくしやたんぽぽからは生命感溢れる春の野の情景が思い起されます。源氏物語の第48帖「早蕨」の巻にある蕨とつくしのエピソードも連想されます。野で摘んだものが優美に飾られている姿が浮かびました。
4つの花雛は、実物の花に近い大きさで表しました。立体で表してみると、花雛としてみたときに、桜雛と柳雛は不可思議に感じられ、鏡花の創作のように思えてきます。そこには、花雛という概念を通じて伝えて残したいものが込められていることを感じます。