吹きまさる風のままなる葛の葉の うらめづらしく秋はきにけり(玉葉和歌集:一条実経)
Fuki masaru kaze no mama naru kuzu no ha no ura medurasiku aki ha kini keri
(Gyokuyouwakashū:Ichijyou uchitsune)
風の吹くままに葉裏をみせる葛の葉に秋を感じ、「うらめづらしく」と心惹かれる想いを詠んだ歌です。「うらめづらしく」の「うら」には、葉の裏と心の内が重ね合わされています。葛は、風と取り合わせて和歌に詠まれることが多く、花よりも葉が注目されていました。
風が激しくなり、野辺の葛の葉が吹き返されて白く波立つ情景が浮かび上がってみえます。時の移ろい、肌で感じた冷気、風の音、葉の動き、野辺の空気感など五感で感じた秋の情趣が伝わってきます。