蔓竜胆

秋の山野で薄紫のリンドウに似た小さな花をそっと咲かせるツルリンドウ。
涼やかで素朴な蔓性の花の風情を薄口の和紙の取り合わせで表しました。

“Tripterospermum japonicum”

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尾花

人皆は 萩を秋と言ふよし 我は尾花が末(うれ)を 秋とは言はむ
(万葉集 巻十:よみ人しらず)

人は皆、秋といえば萩の花を上げる。私は、風に靡く尾花の穂にこそ秋の花と言いたいと率直に詠まれた歌。尾花と呼ばれるススキは、萩に次いで秋を代表する花として万葉の人に愛されていました。

秋の七草に数えられるススキの穂は秋の景物として花として捉え、古来より親しまれてきました。彩り豊かで花の形や大きさも大小さまざまな秋草の中で、ススキはしみじみとした秋の情趣を引き立てます。風に靡く様は、冬枯れの荒涼とした季節を前にして、静かに季節の推移を伝えます。

群落をなして風に靡く様を想い起す一首を書と線描で表しました。

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小萩咲く

ふるさとの 本あらの小萩 咲きしより 夜な夜な庭の 月ぞうつろふ
(新古今和歌集:藤原良経)
Furusato no moto ara no kohagi sakishi yori yonayona niha no tsuki zo utsurofu
( Shinkokin Wakashū:Fujiwara no Yositsune )

小萩が咲く季節、月の光に清澄な秋の気配を詠んだ一首。
一首は『新古今和歌集』秋歌上で月を歌題とした中に排列されています。一首を詠んだ時の摂政太政大臣藤原良経(ふじわらのよしつね:九条良経)は、『新古今和歌集』仮名序を執筆し、巻頭に排列された歌を詠んだ新古今時代を代表する歌人のひとりです。一首には次の詞書があります。

五十首歌たてまつりし時、月前草花

詞書には建仁元年(1201年)に後鳥羽院主催の「仙洞句題五十首」に詠まれたもので、月光に照らされた秋草を題として詠まれたことが記されています。

良経の本歌は、『古今和歌集』(恋歌:よみ人しらず)の次の歌です。

宮城野の 本あらの 小萩露を重み 風を待つごと 君をこそ待て

良経の一首は本歌の「本あらの小萩」の荒れ果てた故郷の庭の萩に寄せ、夜ごと夜ごとに月の光が心にしみ徹って感じられていく時間の推移を秋の深まりと共にしみじみと感じさせます。萩の咲く頃になって庭を照らす月の光が日毎に冴えていく光景を、繊細な花とたおやかな枝が織り成す萩の風情が緩やかに伝えます。

秋の月に託し細やかな想いを詠んだ一首を書で表しました。

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桔梗

青紫の涼やかな桔梗。星形のすっきりとした秋草の風情をグラデーションの和紙の柔らかな色合いと質感によって表し、立体感ある花扇画にアレンジしました。

” Balloon flower” 

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