涼しやと風の便りを尋ぬれば 茂みになびく野べのさゆりば (風雅和歌集:式子内親王)
Suzushiya to kaze no tayori wo tadunure ba shigemi ni nabiku nobe no sayuri ba
(Fuugawakashū:shokushi naishinnou)
『風雅和歌集』の夏歌のなかで、蛍の歌題に次いで配列された夏草を歌題とした一首。
夏は”涼しさ”を基調とした歌が好まれました。夏の”涼しさ”は、視覚・聴覚・触覚などを水・風・木陰・月などの自然事象と取り合わせて詠まれました。
式子内親王の歌は、風の届けてくれた涼やかな花の香りを辿っていく先に、夏草が生い茂った野辺に百合のひっそりと咲く姿が見出される展開が見事です。
”風の便り”を触覚・嗅覚・視覚によって多面的に捉えて緩やかな時間の流れを伝えています。百合の楚々とした草姿、夏の清風に心安らぎます。
さやさやとした微かな風の流れる音を感じる一首を料紙に野辺に茂る草を線描で表し、歌を書で表しました。