萩に蜩

人もがな 見せも聞かせも 萩の花 咲く夕かげの ひぐらしの声(千載和歌集:和泉式部)
Hito mo gana mise mo kikase mo hagi no hana saku yufukage no higurashi
no koe (Senzaiwakashū: Izumisikibu)

秋を伝える萩の花、そしてひぐらしの声に寄せる想いを詠まれた一首。平安中期に紫式部と同時代に活躍した女流歌人、和泉式部の一首です。

一首は『千載和歌集』の秋上部に撰集されています。『千載和歌集』は平安末期、後白河院から撰進の命を受けた藤原俊成(ふじわらのとしなり)が撰者となりました。和泉式部は藤原俊成をはじめ、源俊頼・崇徳院など、当代の歌人に並んで入集歌数が多く、 この勅撰集を代表する歌人の一人となっています。萩とひぐらしを詠んだ一首には、抒情を重んじた俊成の志向が窺えます。

夕暮れ、たおやかな枝に可憐に咲く萩の花、そして心に響くひぐらしの声が醸し出す秋の情趣を誰かと分かち合いたいという思いを歌いあげ、感動が真直ぐに伝わってきます。

しみじみとした秋の佇まい、感銘が心に沁みる一首を書で表しました。

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