昨日だに 訪はむと思ひし 津の国の 生田の森に 秋は来にけり(新古今和歌集:藤原家隆)
Kinofu dani tohamu to omohishi tu no kuni no ikuta no mori ni aki ha kini keri
(Shinkokin Wakashū:Fujiwara no Ietaka)
夏であった昨日ですら、訪れようと思った生田の森。古歌に詠まれた通り今日、初風が吹き秋になったのだと立秋の心を詠まれた一首。『新古今和歌集』の秋歌上で「立秋」を歌題とした一群の中に排列されています。一首を詠んだ藤原家隆(ふいわら の いえたか)は、新古今時代を代表する歌人で、『新古今和歌集』の撰者の一人として活躍しました。
家隆の本歌は、次の一首です。
君すまば とはましものを 津の国の 生田の森の 秋の初風(詞花和歌集:清胤 しょういん)
家隆は本歌の「秋の初風」を受け、秋を待ちかねる心を多くの歌人が和歌に詠んだ歌枕の名所として知られる摂津の国、生田神社の鎮守の森「生田の森」を題材に清澄な歌風で詠みました。
神秘的な森林の佇まいを想わせ、秋を愛した家隆の爽やかで清浄感あふれる一首を書で表しました。
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