時ありて

toki-arite-

時ありて花も紅葉もひとさかり あはれに月のいつもかはらぬ(風雅和歌集:藤原為子)
Toki ari te hana mo momiji mo hito sakari ahare ni tsuki no itsu mo kawaranu
(Fuugawakashū:Fujihara no Tameko)

2015年の中秋の名月は、9月27日。古来、” もののあはれ ” の情趣を誘うものとして四季の移ろいと並び、月に心を託してきました。
春の花、秋の紅葉にはそれぞれに1年の内でも見ごろの時季があり、限られた一瞬の短い間、きらめくように美しい姿をみせてくれます。それに対して月は1年を通じて見ることができるものです。月にも満ち欠けがあり、日が経つにつれて見せる姿、形は移ろっていきます。
為子(ためこ)の歌は、四季を通じて自然をみた時、月だけは空にあり続けることがいっそう哀しさを誘うと捉えたところが中世の複雑な時代背景を感じます。風雅和歌集では雑(ぞう)の部に採られており、月の満ち欠けに ” あはれ ” を感じる視点とは異なる見方が印象的です。

盛りを過ぎて消えゆく花・紅葉を人の世の儚さに重ねて対比させ、不変の月に”あはれ”を想い心を託した歌を書で表しました。

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