投稿者「ymatsu」のアーカイブ

風の柵

山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり(古今和歌集:春道列樹)
Yamagaha ni kaze no kaketaru shigarami ha nagaremo ahenu momiji nari keri
(Kokinwakashū:Harumichi no tsura ki)

山中を流れる谷川にとどまる紅葉を柵(しがらみ)に見立て詠まれた一首。一首を詠んだ春道列樹(はるみち の つらき)の歌は、『古今和歌集』秋歌下に撰集され、紅葉の落葉を歌題とした中に排列されています。一首の詞書には「志賀の山越えにて詠める」とあります。

谷川の散紅葉が見立てられた柵(しがらみ)とは、水中に杭を打ち、竹や柴を絡ませ、水をせき止めたり、流れの勢いを弱めたりするものです。一首で詠まれた谷川は、柵(しがらみ)という言葉から流れは緩やかでなく、せきとめるほどに木の葉が留まっていると読み取れます。山を吹き抜ける風によって川面に降りたまった散紅葉は 柵(しがらみ) となり、色鮮やかな晩秋の景が広がります。流れをせきとめる 柵(しがらみ) は、人によって造成されるものでなく、風の力によって破れやすい木の葉を自然にせきとめ、造られたという視点が清新です。山を吹き抜ける風は冷たく、辺りの空気も凛として感じられます。

川面の散紅葉の見立てによって、秋の名残と冬の気配を鮮やかに詠んだ一首を書で表しました。

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和紙クラフト一日講座「桃」

和紙クラフト 一日講座「桃」
2022年 1月10日 (月)祝日 / 1月29日(土)

各日 10:00~12:00
小津和紙 ( 東京日本橋 http://www.ozuwashi.net/ )

桃の節句とも呼ばれる上巳の節句に向けた立飾り。春の華やぎを伝える桃の健やかで真直ぐな枝ぶり、ふっくらとして愛らしい花と蕾、新芽の柔らかな風情を和紙の特性を生かして表します。作品は、春の息吹を感じさせる枝ぶりを生かしてパネルに仕立て、そのまま置いて飾れる形式に仕上げます。

講座のお申し込み・お問い合わせ・変更は、小津和紙文化教室(一日講座のページhttp://www.ozuwashi.net/lectureship_trial.htmlまでお願い申し上げます。

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山帰来

和紙画の一作。野趣ある山帰来(さんきらい)。小さな実が赤く熟した頃、葉も色づき始めます。動きのある蔓を線描で表し、葉色の変化によって晩秋の風情を表しました。

”Smilax china”

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曙椿

淡桃色の一重の椿。椀咲きの底が広いゆったりとした形と淡い花色が優しい印象です。晩秋より咲始め、寒さを越えて咲く花は、春の前触れを感じさせます。柔らかなグラデーションの和紙と抑えた光沢感ある和紙を取り合わせ、花の表情を表しました。

Camellia Japonica ”Akebono”

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