「雅な雛のつどい展」に向けて、最近の作品の中より画像で表現したものからポストカードにしたものです。
昨年は、和紙とガラス・陶磁器・漆器など異質のものとの取り合わせを試みた作品をいくつか紹介いたしました。和紙と硬質のものを取り合わせることで、和紙の持っている風合いや柔らかさ、温かみがより引き立って見えることがあります。気品のあるもの、侘びた味わいのあるもの、凛としたもの、雅なもの、清涼感のあるもの、素朴で心和むものなど器によって雰囲気もさまざまです。和紙とは異質の器との出会いによって創出される気配があります。
画像の作品は四季の花を集めたものです。春は桜の品種のひとつ御衣黄(ぎょいこう)、夏は山紫陽花をグラスに合わせたもの、秋は七草より葛を扇面にあしらったもの、冬は斑入り椿を陶器に合わせたものです。
「和紙・折り紙:washi・origami」カテゴリーアーカイブ
2015年 春の京都展日程のお知らせ
東武百貨店 船橋店 2月26日(木)~3月4日(水)
詳しくはこちらをご覧ください https://washicraft.com/archives/7575
東武百貨店 池袋店 3月19日(木)~3月24日(火)
森田和紙: 倭紙の店にて
花色紙を取り揃え用意してまいります。
会期中、和紙の折り紙によるお雛様や兜、ぽち袋などの折り紙講習がございます。
「星月夜」
月をこそながめなれしか 星の夜の深きあはれを今宵知りぬる
(建礼門院右京大夫集:建礼門院右京大夫)
Tuki wo koso nagame nare sika hosi no yoru no fukaki ahare wo koyohi siri nuru
(kenreimoninukyounodaifusyu:kenreimoninukyounodaifu)
この歌には長い詞書があります。
十二月一日ごろなりしやらむ、夜に入りて、雨とも雪ともなくうち散りて、村雲騒がしく、ひとへに曇りはてぬものから、むらむら星うち消えしたり。引き被(かつ)き臥(ふ)したる衣(きぬ)を、更けぬるほど、丑二つばかりにやと思ふほどに、引き退(の)けて、空を見上げたれば、ことに晴れて、浅葱色(あさぎいろ)なるに、光ことごとしき星の大きなるが、むらもなく出でたる、なのめならずおもしろくて、花の紙に、箔をうち散らしたるによう似たり。今宵初めて見そめたる心地す。先々も星月夜見なれたることなれど、これは折からにや、ことなる心地するにつけても、ただ物のみ覚ゆ。
12月1日頃のこと。夜のうちは天候は悪かったものの、午前2時半ごろにはすっかり晴れて星空が一面に広がっています。
いままで月にしみじみとした情趣を感じ心動かされてきたが、美しい星空と出逢い、星空にも深く”あはれ”を誘うものがあることに気づいた感動が伝わってきます。
美しい星空を「箔をうち散らしたるによう似たり」と紙に箔を散らした様に捉えたところは、平安時代に歌を書くために趣向を凝らした料紙を思いました。
花の紙とは、花色の紙をいいます。花色はツユクサの花色に由来します。薄青色の縹色(はなだいろ)。縹色は花田色(はなだいろ)とも表記され、花田色が省略されて花色と呼ばれました。
箔が散らされたかな料紙を使い、星月夜を想い書で表しました。
秋の灯
月もみず風もおとせぬ窓の内に 秋をおくりてむかふともし火 (風雅和歌集:後伏見院)
Tuki mo mizu kaze mo otosenu mado no uchi ni aki wo okurite mukafu tomoshibi(Fuugawkashū:gofushiminoin)
灯火の仄かな光以外、色も音もない閑寂な世界。
心の内に去り行く秋への想いを詠んだ歌。
灯火の光の揺らぎと対座してを詠んだ心をむら染め和紙の色合いと書で表しました。
澄み切った空気感と静けさ、時間の推移が心の内の深さを感じます。