
上巳の節句に生命感、春の息吹、再生を伝えるものとして飾られてきた菜の花。
和紙による菜の花を坐雛(すわりびな)に見立てたものです。
草雛の素朴さを残した葉を衣にした姿を葉の組み方の違いによって女雛・男雛を表しました。
“Nanohana hina doll”
2017年2月2日(木)~2月8日(水)
渋谷・東急本店 6階 家具売場 特設スペース

上巳の節句に生命感、春の息吹、再生を伝えるものとして飾られてきた菜の花。
和紙による菜の花を坐雛(すわりびな)に見立てたものです。
草雛の素朴さを残した葉を衣にした姿を葉の組み方の違いによって女雛・男雛を表しました。
“Nanohana hina doll”

江戸後期の戯作者・浮世絵師として活躍した山東京伝(さんとう きょうでん)により、1814~1815年(文化14年~15年)に刊行された随筆『骨董集』。『骨董集』は、近世の風俗・服飾・道具・食物・風習などについて、細密に分類してそれぞれの起源と変遷をはじめ、その形状や形式など詳細に解説した随筆です。
『骨董集』(上編下前)の雛についての部のなかで「ひいな草」と題し、草花遊びから草で人形の髪を結い、紙の衣装を着せた人形遊びが発展したと分析しています。
今の世の女童のひいな草を採(とり)て雛の髪をゆひ、紙の衣服を著せなどして、平日の玩具とす、これもいと古き事なり
その背景として次の歌が引かれています。
思ふとは摘み知らせてきひひな草 わらは遊びの手たはぶれより(為忠初度百首)
一首を詠んだ源仲正(みなもと の なかまさ)は、平安時代後期の歌人です。仲正の詠んだ”ひひな草”は、小さなハコベとされています。仲正の歌に詠まれているように、古より子どもたちが自然に生ずる手近にある小さな草花を人形遊びやままごと遊びの道具としてきたことを伝えています。
春の風物詩として親しまれてきた、蓮華草と菜の花を和紙の温かな風合いによって素朴な形式の雛に見立てました。
”Hina Dolls”

災厄を祓い、身の穢れを移すために人の身代わりとした形代(かたしろ)のひとつとして古代より伝承されてきた草雛を和紙によってイメージしたものです。
萱草(かんぞう)や著莪(しゃが)、菖蒲(しょうぶ)など、剣のように平らで細長い形状の葉を重ねて人の形に象り、雛に見立てられてきました。著莪(しゃが)のように常緑の葉を持つものもあります。まっすぐに伸びた生命感溢れる葉の形状を素直に生かしたシンプルな姿は、植物の持つ荘厳さを想います。
古代中国の『礼記』(檀弓下155)の中には、
芻霊(すうれい)は、古より之れ有り、明器の道なり。
とあります。
芻霊(すうれい)とは、草を束ねて人形に象ったものをいいます。亡くなった人と共に葬られました。明器とは、副葬品をいいます。孔子の生きていた時代よりも遥か昔からあったと記しています。『礼記』の中で、孔子は草で象った人形は人の身代わりとして抽象的にイメージを形にしたものであるのでよいとしました。その背景には、副葬品として人を立体感ある写実的に表現したものは殉死を想わせるとしています。
草を象った草雛が人の身代わりとして祓う形代とされてきた背景には、『礼記』の思想より影響を受けたものがあると思われます。上代の日本では、万葉集に残されている歌にみられるように野にある多種多様な素朴な植物に想いを託してきました。花に限らす、葉や実、根、茎、幹など植物の恩恵によって衣食住が支えられてきた感謝の念を草を形代としたものに感じます。
草雛から発展した花を雛に見立てた花雛には草花遊びによる花雛、和紙を衣装にした紙雛(かみひいな)に見立てた優美な花雛の2つの流れがあります。春の到来の悦びを形に込めた草花遊びから生まれた花雛、紙雛に見立てた花雛のいずれにもその根底には草雛に託されてきた伝統が受け継がれています。
また、子どもの健やかな成長を祈り、子どもの身を守る形代とされた雛の原形とされている「天児(あまがつ)」や「這子(ほうこ)」などにみられる人の体形を省略した素朴で簡素な形式に表現したものにも窺えます。
また、以下のリンク先の記事にて(2017年6月14日「茅の葉」)沢辺の茅(ちがや)を刈り、人形(ひとがた)にして形代(かたしろ)となし、心身についた穢れを祓う行事を和歌に詠まれ例を記しています。
画像の作品は、厚みのある和紙によって葉を縮小し、和紙による葉を実物の葉と同じように重ねて雛に見立てたものです。女雛の高さは、3.5cmほどです。
”Hina Dolls”

上巳の節句に雛に見立てられてきた菜の花と蓮華草。
和紙による菜の花と蓮華草を飾り、春の野の情景を表し表しました。
“Chinese colza & Chinese milk vetch”

上巳の節句に向けた趣向。和紙による、菫(すみれ)と坪菫(つぼすみれ)を1.5cm角の豆盆栽の鉢にあしらったものを雛に見立てたものです。早春、冬の厳しさを乗り越えて咲く可憐な花に寄せ、優しく健やかなものを託しました。
”Viola & Viola verecunda ”

健康と長寿を願う菊の節句、9月9日の「重陽」の節句に向けた趣向のものです。重陽の節句の前夜、菊に赤、白、黄の三色に色分けされた綿を着せ、翌日に露と菊の香が移った綿で体を清めた行事に因み、赤、白、黄の小菊を寄せました。
三色の小菊を和紙の色合いと紙素材の切り口による線を生かし、花の直径を1~2cmほど、高さを12cmほどに縮小して表しました。
” Chrysanthemum Festival ”

菊の花の咲く秋の節句、9月9日の重陽の節句に向けた趣向です。
旧暦での9月9日は、2016年は10月9日にあたります。古来、生命感の強い菊には健康と長寿を託してきました。素朴で細やかな花びら一枚一枚にも表情ある小菊の風情を落ち着きのある和紙の色合いによって表し、扇子にあしらいました。

夏の風物詩、七夕。中国から伝わった牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)の伝説と針仕事や芸事の上達を星に願う「乞巧奠」(きっこうでん)の習わしなどが組合わされ、日本の七夕行事として発展しました。
梶の葉とともに、七夕を象徴してきた笹の葉。和紙による笹の葉に五色の短冊と五色の糸を掛け、七夕飾りを表わしました。
“Tanzaku Tanabata”

7月7日は七夕。願い事を書く紙が貴重であった古では、文字を書くことができる梶の木の葉が使われていました。七夕の夜、梶の葉に詩歌などを書いて供え、願い事をする習わしがありました。
七夕を歌題として梶の葉に託して詠んだ和歌から、梶の葉と七夕の願い事が結びついていたことがわかります。その一例として『後拾遺和歌集』にある、上総乳母(かずさのうば)の一首が知られています。
天の川とわたる舟のかぢの葉に 思ふことをも書きつくるかな
梶の木は、和紙の原料でもありました。梶は楮の原種で、楮より繊維が長いところに特徴があり、丈夫な和紙になります。また、梶の木は神聖な樹木として神事に用いられてきました。
和紙による梶の葉を天の川に見立てた緑を基調とした装飾のある継ぎ紙にあしらい、七夕をイメージしました。
“Tanabata”

5月5日の端午の節句に向けた短冊飾り。
邪気を祓い、息災であることを託す、菖蒲と蓬の葉を和紙で表した節句飾りです。まっすぐに伸びたしっかりとした質感の菖蒲の葉に対し、薄く柔らかな明るい葉色の蓬を質感の異なる和紙によって表し、立体感と生命感を出しました。
“Boy’s Festival”