
花に彩られる春。和紙による椿・桜・藤の花により早春から晩春へと移ろう季節を表しました。
“Spring Flowers”

春霞 たなびきにけり 久方の 月の桂も 花や咲くらむ (後撰和歌集:紀貫之)
Haru kasumi tanabiki ni keri hisakata no tsuki no katsura mo hana ya saku ramu (Gosen Wakashū:Ki no Tsurayuki)
春霞がたなびく季節の到来に寄せ、月の桂にも花が咲くと思えるほど、うららかな春の気配を実感できると詠まれた一首。
”月の桂” とは、古代中国の伝説の中にある、月に生えているといわれる桂の大木をいいます。月の桂に掛かる枕詞、”久方の”は永遠なものという意味が転じ、月をはじめとして天空に関わるものに使われてきました。春霞がたなびく春の象徴的な風景を月に想いを馳せて、天にも地にも春の気配が広がっていることを印象付けています。
日本の山野に自生する桂は、真直ぐに天に向かって伸び大木となり、春には控えめな花が展開します。山野に自生する桂の木と中国の伝説の月の桂にイメージを重ねたスケールの大きさを感じる一首です。
壮麗な春景色に寄せた一首を書で表しました。

花と同時に若葉が開く山桜。赤みを帯びた葉は、白い花色を引き立てます。 山野に自生する山桜の趣を和紙の持つしなやかな風合いと落ち着いた色合いで表しました。
“Wild cherry blossoms”

春の花より、白山吹と木瓜を和紙で表し短冊にあしらいました。清楚な趣の白山吹の花びらにはしぼ(皺)のある強制紙を選び、ふんわりと開いた形を表しました。木瓜の花には、柔らかな風合いと染色の和紙を選び、ふっくらとして愛らしい花の風情を表しました。
”Rhodotypos・Japanese quince”

淡い緑色を帯びた花が清楚で早春の清々しさを感じさせるバイモ。
花弁の内側に入る紫の網目状の模様と動きのある細い葉の表情に独特の味わいがあります。淡い色合いの和紙に手描きし、花の個性を表しました。
”Fritillaria”

花の精をうさぎで表した花うさぎのシリーズのお雛様。
友禅紙にしぼ(皺)を寄せ、縮緬状に加工されたしなやかで凹凸のある和紙の質感を生かし、立体感と温かみを出しました。
”Hina Dolls”

春の野に咲く蓮華と菜の花を和紙で表し、雛に見立てたものです。薄口の柔らかな色合いの和紙を選び、蓮華の花色の衣と菜の花の葉色を衣を着せ、素朴で温かな野の花の風情を形に込めました。
”Hina Dolls”

短冊を歌留多状に切った画面に和紙による花をあしらったシリーズ。
八重桜、菜の花、都忘れ、翁草、山桜それぞれの花の個性に合わせた和紙の色合い、厚み、風合いを生かし表しました。
“Spring Flowers”