投稿者「ymatsu」のアーカイブ

撫子(なでしこ)

nadesiko-sikisai-

秋の七草のひとつ撫子(なでしこ)。風を受けて動く姿はたおやかで優美です。
可憐な秋草を和紙の柔らかな風合いを生かし、花の直径は2cmほど、高さは11cmほどに縮小して楚々として咲く風情を表しました。
”pink”

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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昼顔

hirugao-sikisai-

清涼感のある小さな淡い花色と動きのある蔓に風趣を感じる、身近にある夏草として親しまれてきた昼顔。
薄口の和紙の繊維の強さを生かし、蔓の動きを出しました。花の直径は1.5cmほど、高さは14cmほどの大きさに縮小し、夏の季らしい強さを草の葉に蔓を絡ませた姿によって表しました。

”Calystegia japonica”

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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燕子花(かきつばた)

kakitubata-sikisai

古今和歌集の旅の想いを詠んだ覇旅(きりょう)の部に、在原業平(ありわらのなりひら)の歌の詞書として「あつまのかたに友とする人ひとりふたりいさなひていきけり。みかはの国八橋といふ所にいたりけるに、その川のほとりにかきつばたいとおもしろく咲けりけるを見て、木のかげにおりゐて、かきつばたといふ五文字を句のかしらにすゑて旅の心をよまむとてよめる」とあります。

東の国に友人を一人二人と伴って行った折、三河の国の八橋というところにある川のほとりにかきつばたが美しく咲いているのを見て、かきつばたの五文字を句の頭に置いて旅の心を詠んだ歌が、次の一首です。

唐衣きつつなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ

この歌は、『伊勢物語』第9段の東下りで「むかし、男ありけり」という書き出しで業平の境遇をイメージする物語にもなっています。『伊勢物語』では、燕子花は都を懐かしみ、”あはれ”を誘うものとして後世多くの作品を生み出す力となりました。

初夏、水辺を紫の花とすらりと伸びた葉で爽やかに季節を伝える燕子花。燕子花が群生する様をイメージして高さを10cmほどに縮小して表しました。飾り台の大きさは、幅20cm、奥行5cmです。

”Japanese Iris”

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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菜の花

nanohana-shikisai-

春の風物詩、ナノハナ。ナノハナは、アブラナ属の総称でもあります。
長閑な春の野を想い起してくれる素朴な味わいのアブラナを和紙の色合いと柔らかな風合いによって縮小して表しました。花の直径は1cmほど、高さは14cmほどです。
今年最後の投稿となりました。~春草・夏草・秋草に寄せて~と題し、日本の四季の移ろいを草花に託してきた伝統を想い、引き続き形に表してまいります。春草・夏草・秋草は、それぞれの季節感がその特徴に現われています。対比によって季節の特性が明らかになると考えます。

今年も和紙による作品をご覧いただきありがとうございました。
支えていただいた皆様には心より御礼申し上げます。
温かなコメント、励ましをいただきましたことは何よりも力となりました。
来年もよろしくお願い申し上げます。

”Nanohana”

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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立葵

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真っ直ぐに伸びた姿と鮮やかな花色で夏を告げるタチアオイ。
背丈のある夏草らしい勢いと儚さを漂わせる花を和紙の色合いと柔らかな質感で縮小して表しました。大きく開いた花の直径は、2.5cmほどで高さは15cmです。
”Althaea rosea”

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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水仙

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純白の花のたおやかな優しさ、寒さの中で凛として咲く姿で早春の季を伝える水仙。
和紙の白色と柔らかな質感の和紙により、花の直径を2cmほど、高さは11cmほどに縮小して表しました。

~春草・夏草・秋草に寄せて~
「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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~春草・夏草・秋草に寄せて~

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2016年の1月末の「雅な雛のつどい展」(日本橋三越)では、~春草・夏草・秋草に寄せて~と題した作品群の展開を考えております。四季のある日本では古来より、四季の草花に心を託してきました。ことに、『源氏物語』の第21帖「少女(おとめ)」のなかで紫の上と秋好中宮の「春秋の定め」に代表されるように、春秋の情趣を比べてその優劣を競う春秋優劣論は上代から繰り返し展開されました。その積み重ねによって、”もののあはれ”は秋が勝ると認識されるようになっていきました。秋の情趣を伝える秋草は寂寥感を醸し出し、「あはれ」を伝えるものとして和歌や物語、絵画、工芸、服飾品などの題材としてさまざまな様式で表現されてきました。
優美さのなかに儚さ、わびしさを合わせ持った秋草は、その姿に心を託して文学的な表現をするのに相応しい題材でした。また、歌枕や本歌取りなど和歌文学独特なものが美術工芸に反映され、秋草の表現は洗練されていきました。
秋草に対して、明るく懐かしさを感じさせる春草。そして、春と秋の間にある夏草。
日本の四季を伝えてきた、春草・夏草・秋草を和紙によって縮小して表してまいります。

画像は、秋の七草より「葛」を和紙の繊維の強さを生かし表したものです。葛の葉の大きさは、1cmほどです。飾り台の大きさは、幅15cm、奥行き10cmです。

「雅な雛のつどい展」
2016年 1月27日(水)~2月2日(火) 
日本橋三越本店 新館8階 ギャラリーアミューズ

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クリスマスリース

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” Merry Christmas”

雲文様の友禅紙の折り紙によって青を基調にクリスマスリースに仕立てたものです。ビーズの装飾があるリボンをリースにあしらいました。リースの背景には、同系色の色紙と染色の変化がある板締和紙を取り合わせて、立体感を出しました。

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志賀の浦

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志賀の浦や遠ざかりゆく波間より 氷りて出づる有明の月(新古今和歌集:藤原家隆)
Shiga no ura ya tohozakari yuku nami ma yori kohorite iduru ariake no tsuki
(Shinkokin Wakashū:Fujiwara no Ietaka)

志賀は、琵琶湖の西南岸にあたる地名で古来より歌枕として詠まれてきました。志賀にはかつて大津京がありました。謡曲『志賀』の題名にもなっている地名です。

家隆の歌は、詞書に「摂政太政大臣家歌合に、湖上冬月(こじょうとうげつ)」とあり、この歌は歌合で詠まれたもので、次の歌を受けているとされています。

さ夜更くるままにみぎやは凍るらむ 遠ざかりゆく志賀の浦波(後拾遺和歌集:快覚法師)

琵琶湖の岸辺から遠退いた波間から、有明の月が現われる景色を詠っています。
本歌を受けて岸辺が凍りつき、岸辺に打ち寄せているはずの波は遠退いている情景が浮かびます。岸辺が凍りつくほどの凛とした厳寒の風景でありながら、素直で温かい家隆の人柄が偲ばれて余情を感じます。

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