夏の夕暮れの花。明治の初めに渡来したとされるオオマツヨイグサは、夏特有の一日花の儚さと黄色の花色が印象的な野の花として親しまれてきました。シンプルで柔らかな花の構造を和紙の柔らかな風合いと鮮明な黄色の和紙で表しました。
“Hana-Shikishi Evening primrose”
夏の夕暮れの花。明治の初めに渡来したとされるオオマツヨイグサは、夏特有の一日花の儚さと黄色の花色が印象的な野の花として親しまれてきました。シンプルで柔らかな花の構造を和紙の柔らかな風合いと鮮明な黄色の和紙で表しました。
“Hana-Shikishi Evening primrose”
典雅な夏の花、蓮。大輪の花と葉は、ゆったりとして安らかです。
丸みのある蓮の花弁には、しぼ(皺)の加工のあるグラデーションの和紙の風合いを生かしました。円形の葉には柔らかな草色の和紙に線描を加え、表しました。
(15cm×12cm)
”Lotus”
青を基調に落ち着いた繊細な和紙の色の濃淡と配置によって立体感を出し、梅雨時の気配を表しました。
数種類の青系統の染紙の色合い、しっとりとした楮の和紙の風合いを生かしました。
“Hana-Shikishi Hydrangea”
すらりと真っ直ぐに伸びた姿と大柄の鮮やかな花色で夏を告げるタチアオイ。
草の先端をトリミングして、短冊の画面に展開しました。
夏草らしい勢いと儚さを漂わせる花を板締和紙の色合いと線描、和紙の切り口による輪郭線と反りによる丸みによって花の表情を表しました。
”Althaea rosea”
凛とした風情で辺りを涼やかにする桔梗の花。
白地に薄紫の咲き分けの花を和紙の繊維を調整することによって薄紫のしぼりを入れました。
透明感のある凛とした和紙の質感によって五裂に分かれた花の輪郭を表し、和紙による蛤にあしらいました。
”Balloon flower”
山がつの垣ほ荒るともをりをりに 哀れはかけよ撫子の露(右:第2帖「帚木」夕顔)
山がつの垣ほに生ひし撫子の もとの根ざしを誰れか尋ねむ(左:第26帖「常夏」玉鬘)
『源氏物語』のなかで夕顔と玉鬘の母娘の絆を「撫子(なでしこ)」の花に込めた和歌です。
第4帖「夕顔」のなかで、紫式部は夕顔の花について次のように書いています。
『かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。花の名は 人めきて、かうあやしき 垣根になむ咲きはべりける』 と夕顔の花のイメージを述べています。「花の名前は人のようで、このような粗末な家の垣根に咲いているもの」と表現しており、夕顔の隠れ住む家の周囲の気配から、両親を亡くした中流貴族の娘という身の上が偲ばれます。また、夕顔の花は高貴な貴族にとっては身近に見られない大変珍しい、神秘的なものでした。第4帖「夕顔」は、夕顔の花の神秘性によって展開されています。
右の歌は夕顔の詠んだ歌です。「撫子」に愛児を想起させる伝統的な常套表現です。我が子を可愛がって欲しいと来訪を促すものです。
左の歌は夕顔の娘、玉鬘の歌です。『山がつの垣ほに生ひし撫子の』と右の夕顔の歌を受けながら、源氏の詠んだ『撫子のとこなつかしき色を見ば もとの垣根を人や尋ねむ』に答えたものです。母の元を誰が尋ねましょうかと返したものです。
夕顔の平凡な歌と対比させることで、玉鬘の人となりが際立ってみえます。
玉鬘の歌は、古今和歌集にある『あな恋し今も見てしか山がつの 垣ほに咲ける大和撫子』(読人しらず)を踏まえているとされています。
玉鬘の歌での「撫子」は、紫式部が夕顔の花に込めたものと同じく山里の粗末な家の垣根に咲いているような花として捉えており、「撫子」の花によって母の身の上を伝えています。また、「山がつ」については、第4帖「夕顔」のなかで『物の情け知らぬやまがつも』と書いており、物の情趣もわからないという意味も込めていると思われます。
また、「撫子」の花に母の命の儚さを重ね、花の色香は移ろいやすく儚いものとも暗示しています。玉鬘は幼少で母を亡くしてから、都を離れて鄙(ひな)の地で暮らしてきたことに引け目を感じています。紫式部は、玉鬘を紫の上と同様な境遇に置きながら、内大臣となった頭中将の娘であり源氏の養女となっても、自分の身は取るに足らないもの、人数に入らないものと思う心情を「撫子」の花に込めたと思われます。玉鬘の歌からは、河原撫子の楚々と咲く花の風情が思われて思慮深く、謙虚な人柄が伝わってきます。
’Genji Monogatari Yugao&Tamakazura”
花の妖精をうさぎの形で表したシリーズの一作。桔梗の花が咲き始める夏。
秋の七草のひとつである桔梗の花を小さく作り、あしらいました。衣裳には、白い光沢感のある揉み紙を選び凛とした桔梗の風情を表しました。光を透す和紙の性質を生かし、背景に奥行きを出しました。
”Flower rabbit ”(Balloon flower)
雨を受けて、いっそう輝く紫色の紫陽花。紫の花色は、しっとりとした趣があります。
梅雨の季節を彩る花を楮の数種類の和紙を使い、染色の濃淡の変化と光沢感で表しました。
葉には、しぼ(皺)のあるやや厚みのあるしっとりとした風合いの和紙を使い、葉脈がはっきりとした特徴を表しました。
”Hydrangea”