植物と文学:Plant in the literature」カテゴリーアーカイブ

暮秋

akinokure-

紅葉ばの別れ惜しみて秋風は けふは三室の山を越ゆらん(貫之集:紀貫之)

Momijiba no wakare oshimi te akikaze ha kefu ha mimuro no yama wo koyu ran (Tsurayukisyu:Kino Tsurayuki)

歌の詞書に”九月晦”とあります。旧暦の九月は暮秋とも呼ばれます。
古来より紅葉の名所として歌に詠まれてきた三室山。奈良の斑鳩にある三室山のふもとには同じく紅葉の名所、竜田川が流れています。
三室山を越えて吹く風によって散った紅葉で竜田川の川面が染められた美しさが歌に詠まれてきました。
これから散紅葉によって次第に染め上げられていく景色を想い、段染め和紙の色合いと書で表しました。

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「柳蔭」

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道の辺に清水ながるる柳蔭 しばしとてこそ立ちとまりつれ(新古今和歌集:西行)

夏、道のかたわらに清水が流れる柳の木蔭で安らぎのひと時を詠んだ歌。
青々とした柳の緑、清流の音、そこを吹き渡る風を西行の歌から感じました。
しばしのつもりがつい長いこと留まってしまったという想いを書と和紙による柳で表しました。

michi nobe ni simizu nagaruru yanagi kage shibashi tote koso tachi tomari ture (Shin Kokin Wakashū : Saigyō)

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「花橘」

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夕暮れはいづれの雲のなごりとて 花橘に風の吹くらむ (新古今和歌集:藤原定家)

初夏、橘の花の香りに昔を懐かしく思う心を詠んだ歌を書で表したものと和紙の花をコラボレーションした作品。
かなを書いた料紙は本楮紙に切箔砂子の装飾があるものを使いました。背景にも質感の異なるかな料紙を使い、雅な趣を出したいと思いました。

yūgure ha idure no kumo no nagori tote hanatachibana ni kaze no fukuramu (Shin Kokin Wakashū : Fujiwara No Teika)

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「夕されば」

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“Autumn”

夕されば野辺の秋風身にしみて 鶉(うづら)鳴くなり深草の里 (藤原俊成 千載集)
夕暮れになると野辺を吹き渡る風が身にしみて鶉がしみじみと鳴く深草の里であることよ
次第に日が暮れていく時間の経過と光の移ろい。
鶉の声だけが間をあけて聞こえてくる静寂な草深い里の秋。
そうした和歌に読み込まれた夕暮れの刻々と変わる色、草深い里の秋を短冊の背景にした楮の手漉き和紙の染色で表わしました。
白い厚手の和紙を短冊に切り、天地に秋草文様の能千代紙をあしらい深草の里をイメージしました。

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