中国から伝わった針仕事や芸事の上達を星に願う行事「乞巧奠(きっこうでん)」と日本の風習と結びついた七夕。
織姫が織物が巧みであったことから乞巧奠(きっこうでん)では五色の糸や布などを飾りました。
和紙による笹の葉に五色の糸を掛け、短冊飾りに表しました。
“Tanabata”
中国から伝わった針仕事や芸事の上達を星に願う行事「乞巧奠(きっこうでん)」と日本の風習と結びついた七夕。
織姫が織物が巧みであったことから乞巧奠(きっこうでん)では五色の糸や布などを飾りました。
和紙による笹の葉に五色の糸を掛け、短冊飾りに表しました。
“Tanabata”
2015年の4月19日は、旧暦では3月1日。弥生の始まりです。
2014年は、閏月が加わっているため13ヶ月ありました。季節のずれを少なくするため、旧暦では閏月を加える年があります。2014年の弥生の始まりは、新暦の3月31日。2013年では、新暦の4月10日というように旧暦では、新暦のように一定でなく、年によって変動します。
今、タンポポの花が見頃の時季。黄色の花色が街のあちらこちらで際立ち、目に留まります。花の鮮やかさと葉の逞しさは、春という季節らしい勢いを感じます。
画像は、今年の雛展より泉鏡花の『雛がたり』より想起した、ツクシとタンポポを雛に見立てた『土筆に鼓草雛』(つくしにたんぽぽびな)です。
”Flower doll”
花の精をうさぎの形で表した花うさぎのシリーズより、桜と菜の花の妖精を坐雛(すわりびな)の形式で表した一作。
衣裳には、四季の草花を丸文にした可憐な花の丸文様を図柄にした縮緬状に加工された友禅紙を使い表しました。
”Hina Doll ”
紙雛(かみひいな)の色紙飾りの一作。
京友禅らしい落ち着いた染色の図柄の友禅紙を選び、衣裳にしました。
衣裳にした図柄は、四季の草花を取り合わせた春秋文様に扇面があしらわれています。
扇は末広がりにつながり、吉祥のものとされてきました。
桜が描かれた扇面の部分を男雛と女雛それぞれに生かしました。
色紙には継ぎ紙をイメージしたデザインのものを取り合わせました。
”Hina Doll”
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花の精をうさぎの形で表した花うさぎのシリーズの一作。
桃と菜の花の妖精を雛にしたものです。
衣裳には、檀紙・能千代紙・友禅紙・揉み紙・民芸紙・板締和紙など質感と厚みの異なる和紙を取り合わせて表しました。
”Hina Doll ”
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紙雛(かみひいな)を色紙飾りにした一作。
梅は、早春の季節を伝えるとともに吉祥の植物として愛でられてきました。
友禅紙のはっきりとした図柄を生かし、シンプルに表したいと思いました。
色紙には、数種類の紙を切り継ぎしたものを貼り合せて一枚の紙に仕立てる、かな料紙の継ぎ紙をイメージしたデザインの色紙と合わせ、京風の雅な趣を出しました。
”Hina Doll ”
端午の節句の兜飾りを色紙にあらわしたもの。
端午の節句は、菖蒲の節句とも呼ばれるように菖蒲によって邪気を祓い、健康を願うものでした。菖蒲(しょうぶ)の読み方が尚武(しょうぶ)、または勝負につながるとことから、男児の誕生と成長を祝うものが込められていきました。端午の節句は、穢れや災いを祓う上巳の節句の形代(かたしろ)という概念ではなく、神の依るものとしての依代(よりしろ)として兜飾りが捉えられていました。
兜の背景には端午の節句を象徴する菖蒲の葉をあしらい、友禅紙、千代紙、板締め和紙、揉み紙など質感の異なる和紙を取り合わせ、立体感を出しました。
兜の左右にある華やかな吹き返しと呼ばれる部分には、亀甲、紗綾形、菊花菱などの文様を取り合わせ、吉祥を込めました。
“Tango-Sekku”
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端午の節句の飾りを短冊に表したもの。「雅な雛のつどい展」(1/28~2/3)では、端午の節句に向けた色紙飾りなど出展いたします。
端午の節句では、邪気を祓うものとして菖蒲と蓬が飾られてきました。
しぼ(皺)があり、厚みのある強制紙の性質を生かし、まっすぐに伸びた菖蒲の葉を表しました。蓬には柔らかな質感と、単色の染色でなく、濃淡のある薄口の板締和紙を使い、紙質の違いによって立体感、生命感を伝えたいと思いました。菖蒲と蓬を白い和紙に包み、短冊には、金色の装飾が施されている細幅の歌用のものを合わせました。
掛け軸には板目のはっきりとした木製のもので、壁面に吊り下げなくてもよい、立てかけて飾っていただけるものを選びました。
(短冊:36.4×6cm)
“Tango-Sekku”
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古代、柳は松と同じく神の依る木として考えられてきました。『万葉集』の時代、柳の芽吹きを愛で、歌に詠みました。柳は平城京では街路樹として朱雀大路に植えられ、都を象徴するものでした。
春の日に 萌(は)れる柳を 取り持ちて 見れば京(みやこ)の 大路念(おも)ほゆ (大伴家持:おおとものやかもち)
ふっくらと芽吹いた柳の浅緑に彩られた華やかな都大路の賑わいが想い起されます。
柳は平安京に移されてからも、朱雀大路を中心とした街路樹をはじめ、御所や邸の庭、川の護岸として植えられ、街のあちらこちらに点在しており、身近なものでした。柳の芽吹きは、春を象徴するものとして捉えられていました。
見渡せば柳桜をこぎまぜて 都ぞ春の錦なりける(素性法師:そせいほうし)
『古今和歌集』に選ばれている平安京の春を象徴する一首です。
素性法師は、紀貫之と同時代を代表する歌人です。宇多天皇の歌合にも招かれ、貫之とも交流がありました。『古今集』では36首入集しています。柳と桜の取り合わせを錦にたとえた一首は、雅な都の春景色を想起させるイメージとして、後世、和歌に限らず、絵画や工芸などに影響を与えました。
泉鏡花の『雛がたり』の書き出しの桜雛(さくらびな)と柳雛(やなぎびな)からは、この一首が浮かびました。『雛がたり』では、桜と柳、菜の花と桃、すみれ2種、つくしとたんぽぽという取り合わせの順で配列されています。桜と柳によって平安京の春景色を重ね合わせ、源氏物語の世界へと誘う雅な情趣を伝えています。
鏡花が配列した花雛は、視点が高いところ、雅なものから、視点を下げて鄙(ひな)なものになっています。景色の広がり、心の広がり、古と今をつなぐ絆を感じます。
江戸時代の雛祭りを描いた図には、雛飾りとして柳と桜が生けられて飾られたものがみられます。
柳や桜の枝ぶりをそのまま生かすと高さが必要となります。それと合わせる器も大きくなり、屏風絵に描かれている世界のようにみえてきます。素性法師の歌からイメージされる屏風絵というと、江戸時代の土佐派、土佐光起(とさ みつおき)の『春秋花鳥図』の春の図が浮かびます。
鏡花の『雛がたり』は、華麗な屏風絵のイメージよりも江戸琳派の酒井抱一(さかい ほういつ)が『桜・楓図屏風』で描いたように、桜と柳の下には春草がひっそりと咲く、楚々とした風情が合うと感じました。『雛がたり』に書かれている春景色とその背景から想起したものを短冊を使い表しました。短冊飾りの下に、菜の花、すみれ、つくし、たんぽぽなど春草が咲いている情景をイメージして『雛がたり』の世界を表しました。桜、柳には板締和紙の柔らかな質感と染色を生かしました。
柳は、上巳の節句に飾られてきた植物のひとつでもあります。新年の床飾りの結び柳のように、柳の枝に紅白の餅花をつける餅花飾りや、つるし雛のように柳の枝にさげ飾りをつける柳飾りが伝えられている地域もあります。桜と柳の雛については今後さらに考察していきます。