雛人形・五節句: Hina doll ・Five festivals」カテゴリーアーカイブ

菫雛(すみれびな)

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春の野を象徴する植物としての古代より親しまれきた菫(すみれ)。
日本の四季の中で寂寥感を醸し出す秋草に春・夏の草花を取り合わせ、四季の移ろいを表した襖絵(ふすまえ)に伊年印『草花図(そうかず)』(京都国立博物館蔵)があります。そのなかに菫(すみれ)が描かれています。「伊年」の印は、俵屋宗達の工房内で用いられたものと推測されています。
この襖絵は、艶やかな芥子(けし)を中心に置き、金地の画面に束縛なく浮遊しているかのように他の草花を配置しています。植物それぞれの個性を引き立て合い、花たちが語りかけてくるかのようです。芥子(けし)をはじめ、立葵(たちあおい)、鶏頭(けいとう)など華やかな植物たちが存在感を示している中にあって、ひっそりと人知れず咲く菫(すみれ)の姿が印象的です。植物が背景や意味の説明から開放され、伸び伸びとそれぞれの持っている個性が前面に現されたことで、草丈が低く目立つことのなかった春草の生命感が真っ直ぐに伝わり、春草の素朴な魅力が引き出されていったように感じます。

画像は、春の訪れを伝えて野の風景を思い起こしてくれる菫(すみれ)を雛に見立てたものです。
泉鏡花の『雛がたり』では、白と緋(ひ)と、紫(ゆかり)の色の菫雛(すみれびな)に、紫を”ゆかり”と読ませ『源氏物語』の異称 ”紫のゆかり” を引き出し、紫の上を連想させてくれます。花の持つイメージの力によってその背景を読み取り、物語を創造させてくれる力を秘めているところは、琳派の表現に通じるところと思います。
江戸の花雛をイメージして、簡素な中に雅なものを込めたいと和紙の持つしなやかさと強さで表しました。花の直径は1cmほどで高さは6.5cmほどの大きさです。野趣ある杉板を台座に合わせました。

” Flower hina doll ” 

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菜の花雛

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三月三日の上巳の節句に向け、和紙によって菜の花を雛に見立てたもの。
古来より災厄を祓い、身の穢れを移すために人の身代わりとした形代(かたしろ)のひとつに草を人に象った草雛がありました。古代の草の葉を人の象ったものから、紙や藁など使い花を形代として発展した花雛。
花雛のなかでも生命感と古代の草雛の素朴さを持った葉を衣にした形のものを、生成と朱赤の和紙を紙縒り(こより)ったものを帯にしてまとめ、人形に表しました。一つの花の直径は1cm弱ほど、人形の高さが5cmほどです。

“Nanohana hina doll”

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「蓮華(れんげ)に鼓草雛(たんぽぽびな)」

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古来、自然の移ろい、人生の機微に触れて感じ取ることから生まれる「もののあはれ」を伝えるものとして和歌や物語、絵画、工芸などの題材として表現されてきた秋草。秋草とは対照的な春草は、伸びやかでほのぼのとした懐かしさを感じさせてくれます。王朝文化の憧れから独創的な表現、創造を広げた本阿弥光悦・俵屋宗達に始まる「琳派」の系譜では、土筆(つくし)、蕨(わらび)、蓮華(れんげ)、菫(すみれ)、鼓草(蒲公英/たんぽぽ)、菜の花、桜草、苧環(おだまき)などの春草を題材に、秋草と同様に人事と自然の共存を絵画や工芸などに込めて表現しました。

光悦・宗達が憧憬した平安時代、清少納言は『枕草子』の第百五十一段「うつくしきもの」で、「雛の調度。蓮の浮葉のいとちひさきを、池より取りあげたる。葵のいとちひさき。なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし。」と綴りました。「ひいな遊び」のために用いられた調度には、『源氏物語』第7帖「紅葉賀」に書かれている幼い紫の上が遊んでいたような豪華な雛道具のようなものもありましたが、一般には自然の草花を摘み取って遊びの道具としていました。『枕草子』では、蓮の浮き葉を池から取り上げたもの、葵の小さな葉を調度に見立てた草花遊びの想い出のなかに愛らしさと美しさを見出しました。

可憐さの内に動じない力強さを内に秘めて人の心に温かで懐かしさを想い起こしてくれる春の野の花たち。画像は、2016年の「雅な雛のつどい展」のテーマとして制作した花雛の一作です。春草の中でも、草丈が低く、草花遊びの素材として親しまれてきた蓮華(れんげ)と鼓草(たんぽぽ)を雛に見立て、衣の色で春の気配を表しました。

” Flower hina doll ”

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柳桜に寄せて

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素朴な草を雛に見立てた草雛から発展した花雛は、古代より受け継がれてきた日本人と植物の関わり方、江戸時代の花文化と雅な平安王朝への憧れ、和歌や物語などの古典文学の繋がりなど日本独特の文化が反映されています。

その姿を偲ぶ江戸琳派の鈴木其一(すずききいつ)をはじめとした「花雛図」に表された背景には、本阿弥光悦・俵屋宗達を始祖とした琳派で春草に美を見出したことを「琳派と春草」(2015/4/21)で書きました。「光悦と春草」(2015/4/28)では、春草美の背景に侘び茶があると書きました。簡素な内に雅なものがある花雛。光悦・光琳・抱一、そして其一とを繋ぐものに茶の湯があります。

画像は2015年の「雅な雛のつどい展」より、江戸の花雛の面影を泉鏡花の『雛がたり』を拠り所に『見渡せば柳桜をこぎまぜて 都ぞ春の錦なりける』(古今和歌集:素性法師)の和歌から着想した、桜雛(さくらびな)と柳雛(やなぎびな)を短冊の雛飾りに見立てた「桜に柳雛飾り」です。2016年の「雅な雛のつどい展」では、引き続きその背景を掘り下げてまいります。

” Willow & Cherry Blossoms ”

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七夕

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中国から伝わった針仕事や芸事の上達を星に願う行事「乞巧奠(きっこうでん)」と日本の風習と結びついた七夕。
織姫が織物が巧みであったことから乞巧奠(きっこうでん)では五色の糸や布などを飾りました。
和紙による笹の葉に五色の糸を掛け、短冊飾りに表しました。

“Tanabata”

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旧暦弥生

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2015年の4月19日は、旧暦では3月1日。弥生の始まりです。
2014年は、閏月が加わっているため13ヶ月ありました。季節のずれを少なくするため、旧暦では閏月を加える年があります。2014年の弥生の始まりは、新暦の3月31日。2013年では、新暦の4月10日というように旧暦では、新暦のように一定でなく、年によって変動します。

今、タンポポの花が見頃の時季。黄色の花色が街のあちらこちらで際立ち、目に留まります。花の鮮やかさと葉の逞しさは、春という季節らしい勢いを感じます。
画像は、今年の雛展より泉鏡花の『雛がたり』より想起した、ツクシとタンポポを雛に見立てた『土筆に鼓草雛』(つくしにたんぽぽびな)です。

”Flower doll”

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友禅柄を生かして

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紙雛(かみひいな)の色紙飾りの一作。
京友禅らしい落ち着いた染色の図柄の友禅紙を選び、衣裳にしました。
衣裳にした図柄は、四季の草花を取り合わせた春秋文様に扇面があしらわれています。
扇は末広がりにつながり、吉祥のものとされてきました。
桜が描かれた扇面の部分を男雛と女雛それぞれに生かしました。
色紙には継ぎ紙をイメージしたデザインのものを取り合わせました。
”Hina Doll”
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