雛人形・五節句: Hina doll ・Five festivals」カテゴリーアーカイブ

菜の花雛

nanohanabina-14-1

三月三日の上巳の節句に生命感、春の息吹、再生を伝えるものとして飾られてきた菜の花。
黄色い花色が一面に広がった長閑な風景には心和みます。
菜の花は、小さな花が集まって丸くふんわりと咲いた形が温かく、個体によっての違いもはっきりして見えます。
菜の花雛は、明るく瑞々しい早春の季を伝え、花によっての個性が感じられることで人に見立てた花雛の中でも親しまれてきました。
春の風物詩、菜の花を坐雛(すわりびな)に見立てました。
衣裳には、白を基調に袖口に花色、袴に葉色を使い菜の花のイメージを擬人化しました。
白い衣裳にはしぼ(皺)のある強制紙を使い、人形に表情を出しました。

”Flower doll”

2015 1/28~2/3
『雅な雛のつどい展』

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

紅白梅雛

kouhakubina-1

江戸時代に花開いた雛の文化。
簡素な立雛から内裏雛、雛道具、段飾り、御殿のしつらいなど時代が進むにつれて豪華になっていきました。
近世の雛には雅な平安時代、『源氏物語』への憧れが根底にあり、形になって表れています。

花雛は、上巳の節句本来の災厄を祓い、身の穢れを移すため人の身代わりとした形代(かたしろ)としての草雛から発展した女の子の健やかな成長や幸せを願う心、繁栄、再生などの祈りを込めたもの。
花雛本来の祈りを込めた形に草雛から花雛へと進化していく過程で、雅な王朝文化への憧れが加わり洗練されていきました。

先日、泉鏡花の『雛がたり』と花雛の関係について書きました。 (「雛がたり」と花雛)https://washicraft.com/archives/7087
『雛がたり』は、紫の上を連想させる書き出しから始まり、第8帖の「花宴」で朧月夜が「照りもせず、くもりも果てぬ春の夜の・・・」と口ずさんだ歌で終わる展開になっています。
明治の初めに生まれた泉鏡花の『雛がたり』から、雛と『源氏物語』のつながり、江戸時代には『源氏物語』が読本・源氏絵などを通じて広く普及していたことが読み取れます。

『雛がたり』の書き出しに登場する花雛。
桜雛(さくらびな)・柳雛(やなぎびな)から始まります。
花雛というとまず、花菜(菜の花)や桃の花が浮かぶと思います。桜・柳は第一に思い浮かぶ花雛とは思えません。
『源氏物語』のなかで、紫の上が暮らす六条院の春の町の景色と鏡花の懐かしく想う春の景色が桜・柳の雛に重なりました。
紫式部が源氏の邸、六条院を四季の町として構想し、四季の自然の美しさを感じ取ることで人の心を動かし、人の心を穏やかにして人々の間を調和させることを伝えようとした理想を花雛の中に見出しました。

『雛がたり』から連想された紫の上が演出した春の町。
春の町には紅梅、桜、藤、山吹をはじめ、春の草木で華やかに彩られています。
開花の時季のずれを巧みに生かして散ってしまった梢は次の花が隠してしまうように紫の上がしつらえており、いつまでも春がとどまっているかのようです。
なかでも平安時代、紅梅は女性に大変好まれました。紫の上が紅梅に格別の想いを持っていたことが第41帖の「幻」に書かれています。

寒さの残る早春、桜に先駆けて咲く梅は薫り高く雅な趣で春の兆しを伝えてくれます。
凛とした佇まいに気品ある白梅。優美で可憐な紅梅。
紅梅を紫の上、源氏を白梅に見立てました。作品の高さは、白梅の源氏雛が16cmほどです。
手漉和紙の凛とした白色と質感によって祈りを込めた神聖なもの、物語から感じたイメージを表現しました。

”Flower doll”

2015 1/28~2/3
『雅な雛のつどい展』

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

「雛がたり」と花雛

sumirebina-1

雛(ひな)-女夫雛(めおとびな)は言うもさらなり。桜雛(さくらびな)、柳雛(やなぎびな)、花菜の雛(はななのひな)、桃の花雛(もものはなびな)、白と緋(ひ)と、紫(ゆかり)の色の菫雛(すみれびな)。鄙(ひな)には、つくし、鼓草(たんぽぽ)の雛。

泉鏡花の短編『雛がたり』の書き出しです。
金沢で幼少期を過ごした鏡花が6歳、7歳の頃に記憶した雛の節句の思い出を辿っていくなかで母が大切に持っていた雛の幻想が語られていきます。
雪が消え、一斉に春の花で彩られる季節の雛の節句が金沢の街の情景とともに幻想的に美しく表現されていて、待ちわびた春の歓びが伝わってきます。
『雛がたり』で数々の花雛が挙げらているところは、鏡花が春を感じる花を象徴しているように思えました。春の訪れを形にした花雛が盛んであったことも想像できます。
どのような形のものであったか、興味深いです。
「雅な雛のつどい展」では、『雛がたり』で感じたものからイメージを広げた花を雛に見立てたものをいくつかご紹介したいと思っております。

江戸時代、『源氏物語』への憧れを華やかな内裏雛や雛道具に込めたように、花雛のなかにも素朴で簡素な姿をとどめながら内には源氏物語への憧れを感じるところがあります。

『雛がたり』では菫雛の花色の紫を”ゆかり”と読ませるところに”紫のゆかり”、源氏物語、紫の上が連想されます。”紫のゆかり”とは、『源氏物語』の異称として伝承されてきたものです。『源氏物語』への憧れとともに花雛の雅な姿が想い起されました。
源氏物語の第7帖「紅葉賀」で、幼い紫の上が人形や道具類、小さな御殿などを部屋中に広げて夢中になって遊んでいる場面が思い出されます。物語では、春を象徴する紫の上。菫の花には紫の上の人柄も偲ばれます。

画像の作品は、「菫雛」(すみれびな)です。
春を告げる花のひとつとして古来より親しまれてきた可憐な花。
紫(ゆかり)の色の菫(すみれ)を男雛、淡いピンクの入る柔らかな印象の叡山菫(えいざんすみれ)を女雛に見立てました。
清浄感のある白い楮の和紙を衣裳に簡潔な形で表し、花色と花の持っている風情を引き立てたいと思いました。
作品の高さは10~12cmほどです。
”Flower doll”

2015 1/28~2/3
『雅な雛のつどい展』

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

「花雛」

hanahina-15-1

桃と菜の花を雛に見立てた色紙飾りの一作。
古来より災厄を祓い、身のけがれを移すための人の身代わりとした形代(かたしろ)のひとつに草を人に象った草雛がありました。
簡素な草雛から発展し、桃や菜の花などの季節の花を形代としたものが花雛です。
女の子の成長と幸せを願う心と桃の節句とも呼ばれる上巳(じょうし)の節句本来の祓(はらえ)を込めた形代として桃と菜の花を雛に見立てました。
桃は、上巳の節句ではけがれを祓う形代とされ、繁栄や健やかな成長を願う象徴として雛祭りに飾られてきました。季を同じくする菜の花は、生命感、春の息吹、再生を伝えるものとして桃と合わせて雛祭りには飾られてきました。
桃と菜の花に着せた衣装の裾模様には「向い鶴に亀甲」を選びました。鶴亀の取り合わせの文様に想いを託しました。
2015年の1月末の「雅な雛のつどい展」(日本橋三越)では画像の花雛をはじめ、菜の花雛や草雛の新作をご覧に入れたいと思っております。
”Flower doll”

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

七夕の節句飾り

tanabata-s
中国から伝わった「乞巧奠(きっこうでん)」という針仕事や芸事の上達を星に願う行事と日本の風習と結びついた七夕。
織姫が織物が巧みであったことから五色の糸や布などを飾りました。
笹の葉に短冊と五色の糸を掛け、七夕飾りを表わし掛け軸に飾りました。
(色紙:12×13.5cm)
“Tanabata (Star Festival)”
Star Festival decorations
にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

端午の節句飾り

tango-14-1s

端午の節句に向けた色紙飾り。
邪気を払う菖蒲や蓬は季節の花と合わせて薬玉にもされました。
季節の花には、皐月をしぼ(皺)を寄せた加工の強制紙で表したものを取り合わせました。
色紙は、和紙を切り継ぎしたものを合わせています。
(色紙:12×13.5cm)

“Boy’s Festival”

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

「桜のひいな」

sakurahina-s

桜の花の精を高さ10cmほどの小さな雛の形に表しました。
桜の白い花色をイメージした友禅和紙を衣裳に選んだ一作です。

心なごむ和紙の雛(ひいな)
2014年2月19日(水)~2月24日(月) 午前10時~午後7時
日本橋三越本店 本館5階 趣味雑貨倶楽部
Facebook にシェア

「上巳の節句飾り」

sakura-tachibana-14-s

桜と橘を立体感のある雛に見立てたもの。
立体の雛の背景に合わせて飾っていただいてもよいかと思います。
雛の衣裳の裾には、桜柄の紅白の友禅和紙を取り合わせました。
(色紙:12×13.5cm)

心なごむ和紙の雛(ひいな)
2014年2月19日(水)~2月24日(月) 午前10時~午後7時
日本橋三越本店 本館5階 趣味雑貨倶楽部
協力:お茶の水 おりがみ会館
Facebook にシェア

兜飾り

kabutokazari-s

端午の節句に向けた兜飾りを立体的にフレームに収めました。
異なる質感の和紙によって画面に奥行きを出しました。

心なごむ和紙の雛(ひいな)
2014年2月19日(水)~2月24日(月) 午前10時~午後7時
日本橋三越本店 本館5階 趣味雑貨倶楽部
協力:お茶の水 おりがみ会館
Facebook にシェア