曙花

山もとの 鳥の声より 明けそめて 花もむらむら 色ぞ見え行く(玉葉和歌集:永福門院)
Yama moto no tori no koe yori ake somete hana mo muramura iro zo mie yuku
(Gyokuyou wakashū:Eifukumonin)

春のあけぼの。山のふもとで鳥の声がして、夜が明け始め、桜の花色が少しず浮かび上がって見える景色を詠まれた一首。

『新古今和歌集』以後、王朝的なものが影をひそめていく中世。そうした時代を背景に『万葉集』を拠り所に新風を興した京極為兼が撰者となった、第14番目の勅撰和歌集『玉葉和歌集』に撰集された一首です。京極派を興した京極為兼は、万葉時代のように心に起こる所のままを表現することを目指しました。一首を詠んだ永福門院(えいふくもんいん)は、京極派を代表する歌人の一人として、為兼の唱える心を本位とした真実の感動を詠みました。

一首は『玉葉和歌集』春下で、「桜」を題とした中に排列されています。詞書に「曙花(しょか)」と題されいるとおり、一首は鳥のさえずりから始まり、まだ仄暗い明け方のなかで、あちらこちらで咲く桜の白い花色が浮かび上がってみえてきます。天象の刻々と変化していく中で、細やかに自然を捉えた表現に京極派独特の感性が表れています。

また、門院の御歌に多く見られる「むらむら」という語彙が一首にみられるように、感覚に即して事象を鮮明に表現したところに、自然を深く凝視されたことが窺えます。聴覚と視覚により時間の推移を捉えた一首は、春のあけぼのを幻想的に伝えます。

春の情景を夢幻的に詠まれた一首を書で表しました。

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和紙クラフト一日講座「昼顔」

一日講座「昼顔」
2024 年6月29日(土) / 7月15日(月)祝日
各日 10:00~12:00
小津和紙 
( 東京日本橋 http://www.ozuwashi.net/ )

夏、涼しげに可憐な花を咲かせる昼顔。柔らかな花と蔓の動きがしなやかで、夏草らしい昼顔を和紙の落ち着きのある風合いと和紙の独特の繊維のを生かし、蔓性の動きのある形状を表します。作品は立体感のある花包みにあしらい、そのまま飾っていただける形式に一回で仕上げます。

講座のお申し込み・お問い合わせ・変更は、小津和紙文化教室(一日講座のページhttp://www.ozuwashi.net/lectureship_trial.htmlまでお願い申し上げます。

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貝母

淡い緑色を帯びた花びらが春の野を想わせるバイモ。内側に入る網目状の模様が野趣ある花を和紙に線描で表し、和紙を手折った扇子に見立てたものにあしらいました。 

”Fritillaria”

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御衣黄

淡緑の花色に独特の個性がある御衣黄(ぎょいこう)桜。花色が移ろう様が味わい深い桜の風情を極薄の和紙の重ね方によって表し、和紙を手折った花包みにあしらいました。

” Cherry Blossoms:Gyoikou”

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花海棠

愛らしい花を数多く咲かせ、春の華やぎを伝えるカイドウ。紫の花柄につく薄紅の花びらと濃紅色の蕾の艶やかな風情を和紙の繊細な色合いによる変化によって表し、陶器の一輪挿しにあしらいました。

“Flowering crab applle”

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おしなべて

おしなべて 花の盛りに なりにけり 山の端ごとに かかる白雲(千載和歌集:西行)
Oshinabe te hana no sakari ni nari ni keri yamanoha goto ni kakaru shirakumo
(Senzaiwakashū:Saigyou)

見渡す限り花盛りとなった。いずれの山の端にも、ほんのりと山桜が白雲のようにかかって見えると詠まれた一首。

藤原俊成が撰者となった、『千載和歌集』春上で「桜」を歌題とした中に排列されています。西行の一首は、山々を埋める山桜を白雲に見立て、穏やかに広々とした花盛りの景色を詠みました。一読して意味がよくわかり、穏やかで余韻を感じます。西行の一首は、抒情豊かで格調高く、俊成の歌の理想とした志向と合ったものと思います。

麗らかな春景色をおおらかに詠まれた一首を書で表しました。

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植物展に寄せて

2024年 3月26日~3月31日の会期でgallery DAZZLEにて開催された、5名の作家による「植物展」が無事終了致しました。会期中、ご来場いただき、温かなコメントをお寄せいただきました皆様には、心より御礼申し上げます。大きな励みとなりました。今後とも宜しくお願い申し上げます。

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連翹

黄色の小花がこぼれるように咲く様が、春の明るく瑞々しい陽光を感じさせるレンギョウ。桜の季節、春を彩る連翹の真直ぐな枝ぶりを和紙で表し、竹の一輪挿しにあしらいました。

”Forsythia” 

「植物」
2024年3月26日(火)~3月31日(日)
12:00~19:00(最終日 17:00)
gallery DAZZLE( 東京 北青山 )https://gallery-dazzle.com/

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清寂

限られた時間、開花から咲き定まり優美な姿を見せる儚い夏の花。清らかで辺りに静けさを漂わせる白を基調とした花々より、月下美人・花菖蒲・夕顔の3種の花を画面に表したもの。

背景の和紙は同じ一枚の色和紙を使い、花それぞれの特性によって異なる質感の白色の和紙を選択し、画面に表しました。

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蓮華升麻・敦盛草・小鬼百合

初夏から初秋、日本の山野で優美に咲く、レンゲショウマ・アツモリソウ・コオニユリを1~2cm角ほどの陶器の豆盆栽用に造られた鉢に合せ、それぞれの植物をミニチュアサイズで表したものです。

園芸文化が栄えた江戸時代の中頃、陶器の産地で植木鉢が量産されるようになると、庭のない庶民の住まいでも、園芸を愉しめるようになりました。作品は、そうした園芸文化を偲び、個性豊かな三種の花の形状を繊細な和紙の特性と線描・点描によって表し、豆鉢にあしらいました。

「植物」
2024年3月26日(火)~3月31日(日)
12:00~19:00(最終日 17:00)
gallery DAZZLE( 東京 北青山 )https://gallery-dazzle.com/

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