
秋空に映える秋桜。透明感のある柔らかな色合いと風合いの和紙で軽やかな花の風情を表し、立体感のある植物画としてアレンジしました。
“Cosmos”

古来より、秋の情趣を伝える花として親しまれてきたワレモコウ。背丈のある草姿が風に吹かれ揺れ動くさまは風情があります。楮の繊維の強さによって放射状に伸びた枝を表わし、縮小して草盆栽風に仕立てたものです。高さは18cmほどです。
” Burnet ”

深まり行く秋を華やかに彩る菊の花。繊細で優美な嵯峨菊と朱の小菊で秋の彩りを伝えました。
嵯峨菊・小菊それぞれに合わせた和紙を選び、線と面による立体感を出し、短冊にあしらいました。
”chrysanthemum”

中秋の名月に寄せて、和紙の取り合わせと立体の薄によって、夜空に輝く月の風情を表したものです。夜空に浮かぶ月には、楮の手漉き和紙の持つ白色と表情を生かしました。
”Moonligt Night”

紫の花が高原の秋の爽やかさを感じさせるりんどう。笹状の細長い葉が野趣を醸し出します。
花色が印象的なりんどうを和紙の紫の染色と薄くしなやかな紙質を生かして表し、陶器の一輪挿しにあしらいました。
”Gentian”

木の間より もりくる月のかげ見れば 心づくしの 秋は来にけり(古今和歌集:よみ人しらず)
Ko no ma yori mori kuru tsuki no kage mireba kokoro dukushi no aki ha ki ni keri (Kokin Wakashū:Yomibito sirazu)
木の間から洩れる月の光に秋の心情を感じ詠まれた一首。
『古今和歌集』秋上で、立秋、秋風、七夕歌に続き排列されています。一首の前後の排列から、初秋の月に秋の到来を強く印象付けていることが窺えます。
この一首は、「心づくしの秋」というところに、物思いの限りを尽くす季節をしみじみと感じさせます。初秋の月の光は、まだ木の間隠れに射しています。木の間を洩れる月の光は、秋が深くなり木の葉が色づき、落葉して遮るものがなく冴え冴えとした閑寂な冬へと向かうことを予感させます。微妙な季節の移ろいに心を働かせ、「心づくし」の季節と捉えたところに、秋の感傷がしみじみと呼び起こされます。
また、「心づくしの秋」という表現は、『源氏物語』第12帖「須磨」のなかで「須磨には、いとど心づくしの秋風に、海は少し遠けれど」という一節に引用され、名文として読者の心を捉えてきました。都から離れた須磨の地が、四季の中でもいっそう侘しいと感じさせます。
秋の感傷が心に沁み入る一首を書で表しました。

萩の図柄の能千代紙を背景に秋の野を表したものです。月を浮かべ、薄を描き入れました。月は、能千代紙と異なる質感の和紙を選び、抑えた光沢感と紙の内部が均質でない特性を生かしました。
“Autumn Grass and Moon”