
楓の枝振りを縦長の短冊の画面を生かして表したものです。薄く丈夫な和紙の質感と落ち着いた色合いによって、しなやかな楓の葉の表情を伝えました。
”Scarlet Maple”

夏の夕暮れに白いレース状の花を咲かせた後に実を結び、秋の深まる頃、実は朱色に熟して実りの季節を伝えます。カラスウリの実と色付く葉を数種類の異なる質感の和紙を取り合わせ、野趣ある風情を表しまた。
“Japanese snake gourd ”

野の風情のある白菊と紅葉を取り合わせ、和紙で象った蛤にあしらい、紅葉の季節を伝えました。
小菊、紅葉、蛤それぞれの特質に合わせて、和紙を選択し、一体感を目指しました。
“ Chrysanthemum & Maple”

桐の葉もふみわけがたくなりにけり かならず人を待つとなけれど(新古今和歌集:式子内親王)
Kiri no ha mo fumiwake gataku nari ni keri kanarazu hito wo matsu to nakere do (Shinkokin Wakashū:syokushi naishinnou)
桐の落葉が深く積もり、庭の道も踏み分け難くなってしまいました。人が訪ねて来るのを待っている訳ではないけれども、と秋の情感を詠まれた一首。
『新古今和歌集』秋歌下で紅葉を歌題として落葉を詠んだ一群に排列されています。桐の落葉を詠まれたところに先例のない清新さがあり、桐の持つ崇高なイメージが伝わってきます。
この一首は、中国の唐時代の詩人、白居易(はっきょい)による詩文集『白氏文集』卷十三、「晩秋閑居」より発想を得たとされています。
地僻門深少送迎 地は僻(かたよ)り 門深く送迎少(まれ)に
披衣閑坐養幽情 衣を披(はお)り 閑坐し幽情を養ふ
秋庭不掃攜藤杖 秋庭掃(はら)はず 藤杖を携(たづさ)へ
閑蹋悟桐黄葉行 閑(しづか)に悟桐(ごとう)の 黄葉を踏んで行(あり)く
また、『古今和歌集』の遍照(へんじょう)の次の歌を本歌としています。
わが宿は道もなきまで荒れにけり つれなき人を待つとせしまに
式子内親王の一首は、それらの詩歌を消化して、内親王らしい細やかでしっとりとした情感を込め、晩秋閑居の心を詠んでいます。
落葉樹の中でも格別大きな葉を持つ桐。その一葉がはらりと微かに音を立てて落ち、踏み分けがたくなるほどになるほど積もることで長い時間経過を伝え、”あはれ”を誘います。小さな葉を密生させる楓や銀杏の落葉とは異なる、一葉の重み、かさかさとした音が伝わってきます。
「誰かを待っている訳ではないけれども・・・」と表現した下の句には、晩秋の侘しさに寄せて、世俗を離れて心静かな世界にあっても人恋しさが自然と滲み出ています。高雅な気品の中に温かさを感じる一首を書で表しました。

円窓に見立てた白い和紙の周囲を蔦が覆うようなイメージでリースに仕立てたものです。パネル、円窓、葉、蔓をそれぞれが自然に馴染む和紙素材の取り合わせにより、秋から冬へと移ろう季節の趣を色で表しました。蔦の照葉の鮮やかな紅のなかに僅かに残る緑に秋の名残りを込めました。
“Ivy”

燃え立つような紅葉に彩られる晩秋。緑の楓が次第に色づき、落葉の頃には川面を錦の流れとなって染め上げます。流水文の友禅紙を背景に白緑と朱、紅色の友禅紙の地紋、縮緬加工された金色の和紙を生かし楓の葉を表しました。金泥、金箔で彩色を加え、季節の移ろいを表しました。
“Scarlet Maple”

季節を先取りし、紅葉の図柄の千代紙を背景に友禅和紙、板締和紙、型刷和紙、金箔を使い表した和紙画の一作。異なる質感の和紙を切り貼りしたものに線描を加え、紅葉の季節を表しました。
“Scarlet Maple”

青紫の花が涼やかな秋の山野草、カリガネソウ。
花の姿を雁にたとえた名のとおり、軽やかに宙に舞うかのように優美な印象です。
長く伸びた雄しべと雌しべの花柱が弓なりにしなう形状に特徴があります。和紙の染色と繊維の長さを生かし、細やかな花と動きのある蕾の躍動感を表し、短冊にあしらいました。
“ Bluebeard”