
朱紅の花色と整った草姿が夏草らしい印象の岩菲仙翁(がんぴせんのう)。岩菲(がんぴ)と呼ばれ、ナデシコ科の植物らしい、花びらの切れ込みとすっきりとした葉の描く線が優美です。夏の茶花として親しまれてきました。鮮明な染色の和紙の柔らかさによって花の風情を表し、和紙で象った蛤にあしらいました。
”Silene banksia”

朱紅の花色と整った草姿が夏草らしい印象の岩菲仙翁(がんぴせんのう)。岩菲(がんぴ)と呼ばれ、ナデシコ科の植物らしい、花びらの切れ込みとすっきりとした葉の描く線が優美です。夏の茶花として親しまれてきました。鮮明な染色の和紙の柔らかさによって花の風情を表し、和紙で象った蛤にあしらいました。
”Silene banksia”

初夏の高原の一日花、ヒメカンゾウ。可憐で鮮やかな花は、しなやかな葉の緑に映えて季節を伝えます。ヒメカンゾウは、盛夏に咲く萱草(カンゾウ)よりも小ぶりで、たおやかな印象です。柔らかな一日花の風情を和紙の鮮明な色で表し、扇子にあしらいました。
”Narrow dwarf day‐lily”

たおやかで優美な花を咲かせるクレマチス。細く硬質な蔓を持つクレマチスのなかでも、鉄線の名で親しまれている六弁の紫のものを光沢感のある和紙で表しました。蔓の動きを出し、立体感のある植物画にアレンジしました。
”Clematis”

ふわふわとした細かい花が集まって咲く小形の野趣あるコアジサイ。
細かな花が中心に集まった両性花(りょうせいか)のみで構成されているところに特徴があります。柔らかなグラデーションの和紙の色合いによって繊細な花の風情を表し、陶器の花器にあしらいました。
”Hydrangea hirta”

うつむき加減に咲く姿が可憐な蛍袋。透明感のある釣鐘形の花の形状を手漉き和紙の白色と柔らかさで表しました。野趣を醸し出す花の内側にある斑点は描き入れ、短冊にあしらいました。
“Hotarubukuro”

繊細な花と鋭い葉に野の花の強さと優しさを感じる、ノアザミ。和紙の繊維の強さによって、小花が集まって一つの形にまとまった花の風情を表し、扇子にあしらいました。
” Japanese thistle”

新緑の青葉の上を蝶が舞うように白い花が浮かび上がり、爽やかなものを伝える山法師。
山法師の花は、中心部に球状に小花が集まって咲きます。花びらのように見えるのは総苞片(そうほうへん)と呼ばれるものです。球状になって咲く小花の集まりを支えるように開きます。白い花が開いたようにみえる白い総苞片をしゃきっとした和紙の風合いで表しました。花の中心部の球状に小花が集まりは、和紙の柔軟性を生かしました。立体感のある植物画としてアレンジしました。
“Japanese Dogwood”

夏木立くもるゆふへのそらにこそ 青葉の色は猶まさりけれ(伏見院御集:伏見院)
Natsu ko dachi kumoru yufube no sora ni koso aoba no iro ha naho masari kere
(fushiminoingyoshū:fushimi no in)
『新樹』と題して詠まれた一首。
新緑の美しさを暮色のなかに見出した京極派の代表歌人、伏見院の御歌です。
”夏木立”の初句に純粋な新緑美の感動と清新なものを求められた伏見院の御心を感じます。
新緑の青葉を陽光に照らされた時間帯ではなく、夕暮れの曇った薄明の中で捉えたところに光線の変化に対して敏感な感性を持って表現した京極派の特色が表れています。ハーフトーンのなかで眺めることで視点を一点に集中させ、新緑を鮮やかに際立たせたところに伏見院の御歌風が表れています。清爽なものが心に残る一首を書で表しました。