投稿者「ymatsu」のアーカイブ

薄く濃き

usukukoki-

うすくこき野べのみどりの若草に 跡までみゆる雪のむら消え(新古今和歌集:宮内卿)
Usuku koki nobe no midori no wakakusa ni ato made miyuru yuki no mura kie
(Shinkokin Wakashū:kunaikyou)

早春、野辺の若草の緑をあるところは薄く、あるところは色濃く感じた心を雪がまだらに消えた形跡として表現した一首。

宮内卿(くないきょう)は、後鳥羽院(ごとばのいん)に若くして才能を見出された新古今時代を代表する女流歌人です。鎌倉時代の初め、建任元年(1201年)の後鳥羽院が主催された和歌文学史上最大の規模の歌合、『千五百番歌合』に奉った一首です。『千五百番歌合』は、時代を代表する藤原定家(ふじわらのさだいえ)、藤原家隆(ふじわらのいえたか)、寂蓮(じゃくれん)、藤原俊成女 (ふじわらのとしなりのむすめ:俊成卿女)など30人の歌人が後鳥羽院の命を受けてそれぞれ100首を奉りました。そのなかの一人として、10代の若さで選ばれて後鳥羽院に激励を受けて『千五百番歌合』に参加し、好評を得た一首です。
野辺一面に広がる若草を緑一色ではなく、早く萌え出たものは色が濃く草丈も高く、遅く芽吹いたものは色も薄く草丈も低く差があるところを”うすくこき”という詞で伸びやかに表現されたところが新鮮です。若草の色の差異によって前の季節の名残を伝えているところも創意を感じます。
若くして代表歌人として重んじられ、期待に応えたいと全力で優れた歌を詠もうとした宮内卿の歌のなかでも、爽やかな早春の季節を瑞々しい感性で詠んだ一首を書で表しました。

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白椿

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楮の和紙の光沢感と白色、柔軟性を生かして表した椿を陶器の一輪挿しにあしらいました。
緑の葉色が白い花色を引き立てます。緑の葉には、板締和紙の落ち着いた色合いを生かして表情を出しました。

“Camellia”

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花うさぎ -すみれ-

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花の妖精をうさぎの形で表したシリーズの一作。
春を告げる可憐な野の花、すみれ。紫、薄紫、白と濃淡のある和紙ですみれの花色をイメージしました。
柔らかな質感のグラデーションの和紙によってすみれの花の精を表しました。

“Flower Rabbit”(Violet)

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「椿」

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晩秋から春にかけて、さまざまな花色と咲き方と常緑の葉で目を愉しませてくれる椿。
板締和紙のグラデーションによって花びらと葉の表現しました。
和紙の地色と染色の変化を生かし、生命感と立体感を出しました。

“Camellia”

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梅の季節を愉しむ

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友禅染の技法を和紙に取り入れた友禅紙。なかでも梅をモチーフにしたものには、丸い梅の花びらの愛らしさを表現したもの、琳派をイメージする図柄、伝統文様など多彩にあります。また、梅は吉祥の植物でもあります。
画像の左手のものは、大柄の梅を選んで折った「たとう」です。「たとう」は、紙を折りたたんだものが、閉じたり開いたりできる伝承折り紙です。立体感のある形は、大柄の梅の立体感が引き立ちます。中央は、左手の「たとう」よりも折込の数が少ない形の「たとう」です。琳派風の図柄を選び折りました。シンプルな形は、図柄そのままを生かしたいものによいと思います。右手のものは、梅の凛とした姿と色合いが友禅柄らしいものを選び、しおりに仕立てたものです。友禅紙は、しっかりとした質感で扱いやすく、春の兆しを伝える梅の図柄をテーマや用途によって選び、生かしてみるとよいと思います。

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菜の花に菫

sumire-nanohana-

春の野を想い起してくれる菜の花と菫。柔らかな黄緑の葉と鮮やかな黄色い花色の菜の花と小さな紫の花色が目を引く菫を和紙で表し、扇子にあしらいました。

“Nanohana & violet”

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すみれ

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和紙の色合いの変化、和紙の光沢感、柔軟性を生かしたすみれ。
2月11日に講習しました形の和紙によるすみれをガラスの器にあしらった一例です。萼片(がくへん)は省略し、花びらのつき方ですみれの特徴を表しました。ブーケにまとめたり、和紙の彩と草丈の高低の変化、花びらの開き方の微妙な違いをつけることで花の生命感を表現していただけましたら幸いです。

”Viola mandshurica”

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山深み

yamafukami-

山深み春ともしらぬ松の戸に 絶え絶えかかる雪の玉水(新古今和歌集:式子内親王)
Yama fukami haru tomo shiranu matsu no to ni taedae kakaru yuki no tama mizu
(Shinkokin Wakashū:syokushi naishinnou)

深山での遅い春の到来の喜びをとぎれとぎれに落ちかかる雪解けの滴(しずく)に見出した一首。
式子内親王は、後白河天皇の皇女で和歌を藤原俊成に師事し、俊成の子の藤原定家とも親交があった、新古今時代を代表する歌人です。内親王薨去前年に、後鳥羽院に詠進した百首歌「正治初度百首歌」にある一首です。
円熟した静かな境地で自然観照したなかで、雪解けの滴(しずく)を”雪の玉水”と創意した結句の優美な詞によって、しっとりとした気品ある式子内親王独特の世界が広がってみえます。”絶え絶えかかる”という詞によって、とぎれとぎれに落ちる玉水を捉えた視点は、日本独特の”間”による情趣があり、春の訪れの喜びが繊細で美しい詞を引き立て心に響きます。

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一日講習会のご案内 「 桜 」

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一日講習会のご案内「 桜 」
2016年 3月12日(土)10:00~12:00 
小津和紙 ( 東京日本橋 http://www.ozuwashi.net/ ) 
 
日本の春を伝えてきた桜。今回は、ソメイヨシノをイメージし、明るく可憐な印象の一重の桜の枝を和紙の質感と淡く柔らかな染色で表現します。また和紙の微妙な染色の変化を生かし、花の表情を出してみたいと思います。
桜の枝は、扇子状に折った紙にあしらい、立体的に桜を愉しめるようにアレンジします。雅な趣の扇子にあしらった桜は、そのまま置いた形で飾っていただけます。

講座のお申し込み・お問い合わせは、小津和紙 文化教室の下記のリンク先 
(一日講習会のページ http://www.ozuwashi.net/learning )までお願い申し上げます。

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