投稿者「ymatsu」のアーカイブ

椿

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和紙による白斑入りの一重の椿を陶器の器にあしらいました。
真紅の染紙に和紙の地の白の残り加減の偶然性と光沢感を生かし、花びらの表情を出しました。
葉には濃淡がさりげなくある和紙を選び、葉色に変化を出しました。

”Camellia”
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心あてに

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心あてに折らばやをらむ初霜の おきまどはせる白菊の花(古今和歌集:凡河内躬恒 )
Kokoro ate ni worabaya woramu hatushimo no oki madohaseru shiragiku no hana
(kokinwakashū:Ohshikouchi no Mitsune)

紀貫之(きのつらゆき)と並び、古今集時代を代表する歌人、凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)の菊と霜とを見立てた趣向を詠んだ歌を書で表しました。

白に象徴される円熟の秋。露の冷気が霜となって降り始める頃、凛とした空気に冬の気配を感じます。白菊の咲く庭の景色が、初霜によって昨日までと一変したことが印象付けられ、”初霜”という詞に込められた感動が伝わってきます。

後世、古今和歌集の他にも多数撰ばれ、数多くの派生歌を生みました。
源氏物語第4帖「夕顔」にある「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」は、躬恒の歌からも発想を得ていると思われます。
なかでも、藤原定家(ふじわらのさだいえ)が『定家八代抄』、『詠歌大概』、『百人一首』に撰んだ歌として印象的です。定家の歌にも躬恒の歌から本歌取りしたものがみられます。

白菊の籬の月の色ばかりうつろひ残る秋の初霜

白菊、初霜、さらに月の光を取り合わせ、白を基調とした背景に心を詠んでいます。
定家の詠んだ和歌からは、白の持つ静謐、神聖、清浄無垢なイメージからどの色よりも艶やかに見え、寂寥感がいっそう深まって”あはれ”を誘うと感じ取った心が窺えます。

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クリスマスローズ

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冬の寒さに耐えて、うつむき加減にひたむきに咲くクリスマスローズ。和の空間にも合う花です。
11月3日の講座(小津和紙)にて講習しましたオーソドックスな一重の花をブーケにアレンジしたものです。清楚な花を和紙の持ち味を生かし、表しました。和紙のしゃきっとした風合いは、花の生命感を伝えてくれるように思います。
次回、和紙の花の講座は2月に「すみれ」を予定しております。

”Christmas rose”
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秋の夕暮れ

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見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ(新古今和歌集:藤原定家)
Miwataseba hana mo momiji mo nakari keri ura no tomaya no aki no yufugure
(Shinkokin Wakashū:fujiwara no Sadaie)

鎌倉から江戸時代までの中世から近世へと時代が変遷していく過程で、「侘び」「寂び」という言葉に表現される、閑寂・簡素・枯淡の境地に美意識を見出していく背景には和歌文学の伝統がありました。
そのなかで、新古今和歌集の秋部に”三夕の歌 ”として寂蓮(じゃくれん)・西行(さいぎょう)の歌と並んで配列されている藤原定家(ふじわらのさだいえ)の和歌は、侘び茶の精神を象徴する和歌としてよく引用されます。
千利休の侘び茶を伝える『南方録』(なんぼうろく)で、侘び茶を切り開いた村田珠光(むらたしゅこう)の後を引き継いだ利休の師、武野紹鴎(たけのじょうおう)が「花紅葉を知らぬ人の、初めより苫屋には住まれぬぞ。ながめながめてこそ、苫屋のさびすましたる所は見立てたれ。これ茶の本心なりといわれしなり。」と定家の歌を引き、色彩豊かな花紅葉を眺めつくしてこそ、苫屋の侘びた寂しさが見出され、これこそ侘び茶の心であると説いています。

『南方録』は、利休の没後100年ほど経た江戸時代の元禄年間に福岡藩の家老、立花実山(たちばなじつざん)によって編まれたとされています。利休の死から100年、利休の侘び茶に回帰しようとする流れが起こった時期のものです。成立に謎や疑問の残る書ではありますが、利休の侘び茶を理解する上で参考になる書です。元禄年間に興った侘び茶への回帰の流れは、本阿弥光悦・俵屋宗達を始祖とした琳派の系譜を受け継ぐ尾形光琳・尾形乾山兄弟の作品の内にも反映されているように感じます。
また、1906年 (明治39年)に ニューヨークで出版された岡倉天心の『茶の本』の第4章「茶室」のなかにも「露地のしつらえ方の奥意は次の歌の中にある」として定家の歌を引いています。
花紅葉の華麗で感覚的な見た目や形の美しさと対照的な苫屋以外みえない景色は、「侘び」「寂び」で表現される奥底にある目に見える形ではない心の美、命の再生を内包する枯野の美が想い起こされます。

移ろい行く自然をあるがままに受け入れ、必要のないもの一切を削ぎ落とすことで生まれる閑寂の世界を表現した一首を書で表しました。

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薔薇

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秋の薔薇の季節。真紅の薔薇をしぼ(皺)の加工された厚みのある強制紙の質感と深みのある色合いで表しました。真紅の花を引き立てる葉には、楮の染紙の自然な光沢感を生かしました。

“Rose”
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