投稿者「ymatsu」のアーカイブ

涼しき影

suzushikikage-

むすふてに涼しき影をそふるかな 清水にやとる夏のよの月(西行法師家集:西行)
Musufu te ni suzushiki kage wo sofuru kana shimitsu ni yatoru
natsu no yo no tsu ki (Saigyouhoushikashū:Saigyou)

手で掬った清水に映った「夏の月」を詠んだ西行の一首を書で表したものです。
納涼を感ずる対象として詠まれた「夏の月」。自然を詠んだ西行も月をよく詠みました。
泉の澄みきった透明感とひんやりした手の感触、涼やかに白く輝く月が合わせられ、より清涼な印象が深まって感じられます。
水に宿る月には、白く輝く月に託した清らかで揺るがない心の深さを感じます。

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紅葉葵

momiji-aoi-15-1

紅葉葵 (もみじあおい)は、夏から秋にかけて鮮やかな大輪の花と青楓のようなすっきりした葉の風情で涼やかなものを伝えてくれます。
日本に渡来したのは明治の初めとされていますが、 紅蜀葵(こうしょくき)とも呼ばれて日本の風土に溶け込み、日本画の画題にもみられるように和の趣きにもよく馴染みます。
明るくおおらかな花と繊細な立ち姿は、夏の一日花特有の儚さも漂わせていて情趣を感じます。和紙の繊維としっとりとした風合いを生かし、花の風情を表しました。

”Scarlet rose mallow”

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蓮華升麻(レンゲショウマ)

renngeshuoma-15-1

日本固有の深山の花。透明感のある清楚な白い花と丸い蕾のつき方に独特のものがあり、その姿から静謐で清らかな山の気配を感じます。
レンゲショウマの花びらには白地に薄紫のぼかしの入った和紙の質感を生かし、短冊の画面に表しました。

” False Anemone ”

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秋桜

kosumosu-15-2-

性質の異なる和紙を重ね合わせて簡潔に表した秋桜。
8月1日に講習しました形の和紙による秋桜を竹の花器にあしらった一例です。花びらの細かな表情は省略し、萼片(がくへん)、葉の表情、花の向き方などによって秋桜の風情を伝えたものです。
竹の花器と合わせ、落ち着いた秋の風情を出したいと思いました。器の取り合わせ方、あしらい方によって、明るく爽やかな印象になったり、可憐な印象になります。
次回の講座は、11月3日に予定しております。

”Cosmos”

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花色紙「萩」

hagi-15-2

風になびく姿が優美な萩。枝の描く曲線は、木でありながら草のようにたおやかなところから秋草のひとつとして親しまれてきました。細やかな花と躍動感のある葉を和紙の繊維を生かし表しました。
楮の繊維を漉き込んだものが光を透すと模様となって浮かび上がってみえる雲龍紙を色紙の背景に取り合わせました。

“Hana-Shikishi Bush clover”

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扇面「木槿」

mukuge-15-2

格調高い夏の花、ムクゲ。儚い一日花は、夏の朝の光に映え、瑞々しく輝きます。
白地に底紅(そこべに)の花を楮の和紙の白色と繊維を生かし表し、扇子にあしらいました。

”Rose of Sharon”

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夏の夜

natsunoyoru-

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月やどるらむ (古今和歌集:清原深養父)
Natsu no yo ha mada yohi nagara akenuru wo kumo no izuko ni tuki yadoru ramu
(kokinwakashū:kiyohara no fukayabu)

清原深養父(きよはらのふかやぶ)は、『枕草子』で「夏はよる。月の頃はさらなり。」と夏の夜の情趣を伝えた清少納言の曽祖父にあたります。古今時代の歌人、紀貫之(きのつらゆき)、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)と交流のあった歌人です。

『古今和歌集』の夏部に「月のおもしろかりける夜、あかつきがたによめる」と歌の詞書があります。
短夜の夏、涼やかな月の余韻を感じる一首です。秋の月とは違った夏の月の趣を見出した平安期。「夏の月」が歌題として現われた頃に詠まれた歌からは、白く照らした月の光に爽涼を感じた観月を愉しむ心が格調高く真っ直ぐに伝わってきます。

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