日本橋三越本店
新館8階 ギャラリーアミューズ
2016年 1月27日(水)~2月2日(火)
午前10時~午後7時
協力:お茶の水・おりがみ会館
初夏、水辺を優美に彩る花菖蒲。生命感溢れる瑞々しい花姿は多様で、群落して雨季の時期を色鮮やかに彩ります。
藤色のぼかしが柔らかに入れられた和紙の質感を生かし、ふんわりとした花の風情を表しました。
“Hana-Shikishi Iris ensata”
群落を形成して春の到来を告げる可憐な花、カタクリ。柔らかな質感の和紙で花の風情を表しました。
“Hana-Shikishi Dogtooth violet”
秋の京都展に向けた一作。春の風物詩、菜の花。
明るく瑞々しい生命感溢れる花を和紙の柔らかさと楮の繊維の強さを生かし表しました。扇面には、穏やかな銀地に金のきぼかしが柔らかく入ったかな料紙を選び、春のしっとりと温かな空気感を出しました。
“Hana-Shikishi Nanohana”
春の夜の朧月に対して、秋の夜の澄み渡る空にかかる明月。春のしっとりとした柔らかな空気と対照的に冴々とした空気が漂う秋の夜。薄の穂と短冊の色合いで、月の光と静けさを表しました。
”Autumn grasses under the Moon”
時ありて花も紅葉もひとさかり あはれに月のいつもかはらぬ(風雅和歌集:藤原為子)
Toki ari te hana mo momiji mo hito sakari ahare ni tsuki no itsu mo kawaranu
(Fuugawakashū:Fujihara no Tameko)
2015年の中秋の名月は、9月27日。古来、” もののあはれ ” の情趣を誘うものとして四季の移ろいと並び、月に心を託してきました。
春の花、秋の紅葉にはそれぞれに1年の内でも見ごろの時季があり、限られた一瞬の短い間、きらめくように美しい姿をみせてくれます。それに対して月は1年を通じて見ることができるものです。月にも満ち欠けがあり、日が経つにつれて見せる姿、形は移ろっていきます。
為子(ためこ)の歌は、四季を通じて自然をみた時、月だけは空にあり続けることがいっそう哀しさを誘うと捉えたところが中世の複雑な時代背景を感じます。風雅和歌集では雑(ぞう)の部に採られており、月の満ち欠けに ” あはれ ” を感じる視点とは異なる見方が印象的です。
盛りを過ぎて消えゆく花・紅葉を人の世の儚さに重ねて対比させ、不変の月に”あはれ”を想い心を託した歌を書で表しました。
友禅染の技法を和紙に取り入れた友禅紙。秋の季節を伝えるものには、秋草を題材にした古典的な図柄があります。
日本の四季の中でも色鮮やかに可憐な草花に彩られる秋。萩、撫子、薄、桔梗、菊、蔦などを題材にして表現される文様には、秋草の繊細さ、愛らしさ、秋野の風情、王朝的で雅な趣を漂わせるものがあります。
画像は、秋草文様を生かして伝承の折方の「たとう」と「ぽち袋」で季節を伝えてみたものです。
画像の左は、菊に露芝文様の友禅紙に裏面に金色加工されたもので折ったものです。露芝は、芝草に露がかかった様を表したもので、小菊との取り合わせは野の風情を感じます。中央と右手のものは、撫子の異なった図柄の友禅紙で折りました。中央は可憐なイメージ、右は古典的なイメージと印象が異なります。お香を包んでこのまま置いた形で飾っていただいてもよいと思います。友禅紙の図柄や色合いを生かすことで折方の立体感が引き立ち、季節を愉しんでいただけます。
雅な趣で新緑の季節を彩る藤。紫の和紙の濃淡、楮の繊維の強さをと柔軟性を生かして花房に動きを出しました。
扇面には草色のグラデーションのかな料紙を使い、新緑の爽やかな季節を伝えたいと思いました。
“Hana-Shikishi Wisteria”
冬の到来を前にして、静かに深まっていく秋。
蔦の葉の緑から真紅へと色の変化で時の移ろいを表しました。蔦の葉には、数種類の和紙を使い、和紙の自然な光沢感と繊細な色と柔らかさで立体感を出しました。
“Hana-Shikishi Ivy”