雨の季節。雨を受けて輝く青い花色の紫陽花。
しっとりとした季節を紫陽花の花色に託し、和紙の彩りで表しました。
”Rainy season”
八重咲きの山桜を平面によって短冊の画面に表したシリーズの一作。
淡い花色の山桜に合わせて短冊を選び、短冊の地色と装飾を生かしました。
柔らかなしぼ(皺)の加工と白い地色に微かに桜色のぼかしが入った和紙を使い、花弁の重なりと花色の変化を出しました。
“Cherry Blossoms”
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「雅な雛のつどい展」のテーマのひとつにしております、泉鏡花『雛がたり』は『源氏物語』を想起させると同時に雛祭りが桜の季節に行われていたことを印象付けていました。
花雛の一番に桜雛(さくらびな)を取り上げていました。
平安時代以前、花といえば ”梅” を指しました。万葉集では桜よりも梅を詠んだものが多く選ばれ、梅が鑑賞の対象になっていました。
平安遷都の折には、御所の紫宸殿には桜ではなく梅が植えられ、後に桜に植えかえられました。
平安時代に入り、国風文化が形成されていく過程で、花といえば ”桜” を示すようになっていきました。
桜が愛でられるようになっていくのと並行して、ひらがなの創出と発展、万葉集以降一時衰退した和歌の復興、大和絵(やまとえ)の出現などによって日本独特の美意識が生まれました。
なかでも、かなの出現は、考えや感情を自在に表現することを可能にしました。「雅」と表現される感性は、ひらがなの洗練によって磨かれていったように思います。漢字からかなが誕生したことは、単に文字としての表現ということに留まらず、日本独自の「余白」という美意識を育んでいきました。「余白」は、目に見えない心の世界を広げていきます。
平安初期に興った国風文化は今では「雅」と表現されますが、王朝の雅な文化を創出した時代の人々の熱意、意志の強さを内に感じ、桜の花に想います。
画像の作品は、「雅な雛のつどい展」に向けて八重山桜を平面と立体による和紙画で表したものです。
(色紙:12×13.5cm)
” Cherry Blossoms ”