植物と文学:Plant in the literature」カテゴリーアーカイブ

おしなべて

おしなべて 花の盛りに なりにけり 山の端ごとに かかる白雲(千載和歌集:西行)
Oshinabe te hana no sakari ni nari ni keri yamanoha goto ni kakaru shirakumo
(Senzaiwakashū:Saigyou)

見渡す限り花盛りとなった。いずれの山の端にも、ほんのりと山桜が白雲のようにかかって見えると詠まれた一首。

藤原俊成が撰者となった、『千載和歌集』春上で「桜」を歌題とした中に排列されています。西行の一首は、山々を埋める山桜を白雲に見立て、穏やかに広々とした花盛りの景色を詠みました。一読して意味がよくわかり、穏やかで余韻を感じます。西行の一首は、抒情豊かで格調高く、俊成の歌の理想とした志向と合ったものと思います。

麗らかな春景色をおおらかに詠まれた一首を書で表しました。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村

Facebook にシェア

八重山桜

いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな(詞花和歌集:伊勢大輔)

奈良の僧都から宮中に進上された八重桜を詠まれた一首のとおり、古都に咲く雅な趣を漂わす八重山桜。伊勢大輔の一首に寄せ、白い控えめな花が優美で落ち着きのある、閑雅な山桜を和紙の繊細な色合いと線描によって表しました。

 ” Cherry Blossoms” 

「植物」
2024年3月26日(火)~3月31日(日)
gallery DAZZLE( 東京 北青山 )https://gallery-dazzle.com/

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

水の面に

水(み)のおもに あやおりみだる 春雨や 山のみどりを なべて染むらん(新古今和歌集:伊勢)
Mi no omo ni aya ori midaru harusame ya yama no midori wo nabete somuran
(Shinkokin Wakashū:Ise)

池の水面を綾織るように乱す春雨。春雨が山を緑に染め上げているのであろうか、と詠まれた一首。

古今時代を代表する女流歌人、伊勢の詠んだ一首は『新古今和歌集』春歌上で「春雨」を歌題とした中に排列されています。一首は『新古今和歌集』の詞書に記された、「寛平御時后宮の哥合哥(かんぴょうのおおんとき きさいのみや の うたあわせ うた」とあるとおり、紀貫之をはじめ、古今時代を代表する歌人が集う、歌合せで詠まれたものです。

春の野山に降り注ぐ春雨が、水面に綾を織りなすように波紋を映し出し、山に降り注いだ春雨が若葉の緑を染め上げているのだろうか、と詠みました。鏡に見立てた水面に映る波紋に着目し、萌え出たばかりの瑞々しい若葉の緑を鮮やかに浮かび上がらせます。

清新な春の情感を細やかで、色彩豊かに捉えた一首を書で表しました。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア

春の色

霞とも 花ともいはじ 春の色 むなしき空に まづしるきかな(式子内親王集:式子内親王)
Kasumi tomo hana tomo ihaji haru no iro munasiki sora ni madu shiru ki kana
(Shokushi naishinnou syu : Shokushi naishinnou )

果てしなく広がる大空。春を伝える霞も花も眼には見えない空に、春の兆しがはっきりと感じられると詠まれた一首。

新古今時代を代表する歌人の一人、式子内親王が詠まれた一首は、霞や花の実体のない空の気配を心の眼で捉え、春の空気感を「春の色」という詞で表したところに、内親王らしい繊細な感性が表れています。うららかな春の気配を伝える一首を書で表しました。

にほんブログ村 美術ブログ 工芸へ
にほんブログ村
Facebook にシェア