月別アーカイブ: 2017年8月

風草

風に揺れる繊細な花穂が優美に見える事が名の由来となった風草(かぜくさ)。道端や空き地でみられる草です。
夏から秋に群れて咲く花穂と細長く、すっきりとした葉は爽やかな秋風を感じさせてくれます。細やかで動きのある花穂と葉の特徴を和紙の取り合わせ方と色合いで表し、陶器の一輪挿しにあしらいました。

”Eragrostis ferruginea”

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源氏物語より「藤袴」

『源氏物語』第30帖「藤袴(ふじばかま)」より、巻名の由来となった藤袴の花と夕霧の歌を和紙による花と書で表したものです。

同じ野の 露にやつるゝ 藤袴 あはれはかけよ かごとばかりも ( 夕霧 )

夕霧(源氏と葵の上の子)は、実姉と思い慕っていた玉鬘(たまかずら)が従姉と知り、藤袴の花を持って玉鬘を訪れます。藤袴の花を御簾(みす)から差し入れながら、あなたと同じ野の露でしおれている藤袴に情けをかけて欲しいと歌を贈ります。

夕霧の一首は先ごろ亡くなった、祖母の大宮の喪に服しているところから、喪服の藤衣(ふじころも)の意味と、縁(ゆかり)を意味する紫の花色の意味をかけて、同じ祖母を持つ孫として藤袴に託し、慕情を訴えました。

それに対して玉鬘は、

たずぬるに はるけき野辺の 露ならば うす紫や かごとならまし ( 玉鬘 )

と切り返します。「かごと」とは口実という意味です。玉鬘は、あなたが尋ねても、遥か遠い野辺の露というのであれば、藤袴の薄紫の花色はたんなる言い訳なのでは、と夕霧の言い分を断ります。

中国原産の藤袴は、奈良時代には日本に渡来していたとされ、茎や葉に香気があることから、その香りを身につけるなど、尊ばれていました。その後の物語で、匂宮が好む花として、芳香を持つ藤袴への愛着が取り上げられています。

“Genji Monogatari no.30 Fujibakama”

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源氏物語より「野分」

『源氏物語』第28帖「野分(のわき)」のテーマを秋草によってイメージしたものです。野分とは、野を分けるほどの荒々しい風雨に見舞われる、台風のことをいいます。六条院の秋の町に暮らす、秋好(あきこのむ)中宮の庭は秋の草花が咲き乱れ、人々の目を楽しませていました。そんなある日のこと、例年になく激しい野分が襲来し、源氏の邸、六条院も荒らされます。

野分の見舞いに父源氏の邸、六条院を夕霧は訪れます。源氏と紫の上の暮らす春の町で、野分の激しい風により、偶然にも紫の上を垣間見ます。野分の荒ぶる激しさが、夕霧の心象風景として春の町の庭の荒れ果てた光景に表現されています。紫の上を象徴する優美な春の町の庭は、風で築山の木々が吹き倒れ、枝も何本も折れ、草むらはいうまでもなく、庭は雑然として変わり果てています。

野分が静まり、源氏の使者として夕霧は秋好中宮を見舞います。秋の町の御殿は落ち着きを取り戻し、童女らが庭に出て虫籠に露を入れている光景を遠目に見ます。その”あはれ”を誘う、優艶な光景に破綻することのない、冷静な夕霧の心が映し出されています。秋の町は、しみじみとした秋の情趣を漂わせています。

風に靡き、しなだれる風情に秋の情趣を感じる秋草より、薄・女郎花(おみなえし)・白萩・藤袴・葛を和紙で表したものを取り合わせ、秋草文様の友禅紙を手折った花入れにあしらいました。

“Genji Monogatari no.28 Nowaki”

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松虫草

爽やかな高原の花、マツムシソウ。小花が多数集まって咲いたものが一つにまとまった、丸みのある頭花(とうか)という形状に特徴があります。薄紫の小花のひとつひとつと繊細な葉を柔らかな和紙で表し、短冊にあしらいました。

”Scabiosa japonica”

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紅葉葵

鮮明な紅色の大輪の花と青楓のような繊細な葉の風情が涼やかなモミジアオイ。
紅蜀葵(こうしょくき)とも呼ばれ、夏の一日花の儚さも漂わせます。和紙の取り合わせ
によって、繊細で艶やかな花と涼やかな葉を表しました。

”Scarlet rose mallow”

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萩に撫子

流れるような枝が優美な萩。可憐な河原撫子。草葉の描く線の流動感と繊細な花が、秋の気配を静かに伝えます。それぞれの花の特徴を柔らかな和紙の風合いと繊細な色合いで表し、竹の花籠にあしらいました。

“Autumn grasses”

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扇面「葛」

秋の七草のなかでも、野趣ある葛。赤紫の優美な花色の花穂と白い葉裏をみせながら風にそよぐ姿は風情があります。蔓の動きに野の花の強さを感じる葛を和紙の取り合わせと繊維の強さによって表し、扇子にあしらいました。

“Kudzu vine”

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