露白き夜

竹の葉に 露白きよの 月のいろに 物さむくなる 秋ぞ悲しき( 五首歌合:永福門院 )
Take no ha ni tuyu shiroki yo no tuki no iro ni mono samukunaru aki zo kanasiki
( Gosyu uta awase : eifukumonin )

風によって物悲しさをかき立てる秋。竹の葉に置く露に月の色も秋の心を受け、愁いを帯びた色となっていくと詠まれた一首。

王朝的なものが影をひそめていく中世。鎌倉末期~南北朝の混沌とした時代に一首を詠まれた永福門院は、『万葉集』を拠り所に京極為兼が興した「京極派」を代表する女流歌人の一人として、為兼の唱える心を本位とした真実の感動を詠みました。

真直ぐに伸び立つ竹稈(ちくかん)に細葉を密に茂らせ、その葉に置く白露の放つ輝きが、ひんやりとした秋風に微かに靡き、揺れ動く様や音を想起させ、閑寂な気配を伝えます。冴え冴えとした月の光に照られ、露に濡れた竹の葉に置く露を宵闇に包まれ、明暗を際立たせて詠むことにより、静寂な秋の気配が鮮明に浮かび上がります。秋の気配を露と月の光によって表現された門院の御歌は、自然と一体となって凝視され、寂しい秋が来たのだという哀愁が深く漂います。

秋到来を白を基調とした竹の葉に置く露の清らかさを月の光を透し、悲哀の情を詠まれた一首を書で表しました。

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稲葉そよぎて

昨日こそ 早苗(さなえ)とりしか いつのまに 稲葉そよぎて 秋風の吹く(古今和歌集:よみ人しらず)
Kinofu koso sanae torishika itu no ma ni inaba soyogite akikaze no fuku ( kokin Wakashū :yomihito shirazu )

田植えの頃、苗代から早苗を取って田に植えたのは、昨日のことのように思われる。いつの間にか稲葉を秋風が吹いていると詠まれた一首。一首は、『古今和歌集』秋歌上で立秋を題とした2首に続き、秋風を歌題として排列されています。

田植えが終わったばかりの時節は、まだ小さな苗が水を張った田を青々と瑞々しい光景を見せていたことが、昨日のことのように思われ、月日の経つ速さが伝わってきます。秋の気配を秋風により、実りの季節の秋色へと移ろいゆく様を想起させます。一首は、秋風が田園風景の色彩を青々とした瑞々しい風景から、黄金色に色づく稲穂をそよがせる風景へと移ろうことを予感させます。

初秋の田園風景を清々しく簡潔に詠まれた一首を書で表しました。

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綿

夏から秋にかけ、木槿の花に似たふんわりとした柔らかな花を咲かせる綿の花。薄黄色の花びらと基部が紫色に染まるコントラストが雅趣ある花を和紙の取り合わせ方によって表し、竹の花籠にあしらいました。

”Cotton flower”

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萩に撫子

初秋を伝える秋草、萩と撫子。たおやかに風に揺れる姿が優美な秋草2種を和紙の柔らかな色合いとしなやかさで表し、和紙を手折った扇子にあしらいました。

 ”Autumn grasses” 

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昼顔

涼やかな可憐な花と細く強靭な蔓を持つ昼顔。淡色の愛らしい花と細長く勢いある葉の風情を和紙の取り合わせ方と色合いによって表し、和紙を手折った花包みにあしらいました。

”Calystegia japonica”  

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扇面 風露草

小さな繊細な花を咲かせるフウロソウ。夏から初秋に向かう山野を可憐に彩ります。浅間山麓に多く自生するところに由来するアサマフウロをはっきりとした和紙の色合いと線描によって表し、扇子にあしらいました。

“Geranium soboliferum”

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