
冷たい雨露を受けて紅葉が進む時季。鮮やかに色づく小楢の葉を和紙の自然な色合いと感触によって表しました。
“Quercus serrata”

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微かな薄紅地に薄紅の縦絞りとぼかしが僅かに入る初雁椿。柔らかな色合いと咲き方が温和な印象の一重の椿です。数種類の和紙の取り合わせ方と和紙の特質により、花びらの淡い地色の変化を表しました。
Camellia Japonica ” hatsukarhi ”
星形の小さな花が集まって咲く姿が清楚なセンブリ。1000回振り出しても苦いとこから名がついた薬草として知られる山野草です。リンドウ科の植物らしいすっきりとした花の形状と草姿を質感の異なる和紙の取り合わせと線描によって表しました。
“Swertia japonica”
白地に入る細やかな絞りが可憐な早咲きの玉霞椿。抱え咲きのふっくらとした温かみのある花を和紙の取り合わせと点描によって表しました。
Camellia Japonica ” Tamagasumi ”
山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり(古今和歌集:春道列樹)
Yamagaha ni kaze no kaketaru shigarami ha nagaremo ahenu momiji nari keri
(Kokinwakashū:Harumichi no tsura ki)
山中を流れる谷川にとどまる紅葉を柵(しがらみ)に見立て詠まれた一首。一首を詠んだ春道列樹(はるみち の つらき)の歌は、『古今和歌集』秋歌下に撰集され、紅葉の落葉を歌題とした中に排列されています。一首の詞書には「志賀の山越えにて詠める」とあります。
谷川の散紅葉が見立てられた柵(しがらみ)とは、水中に杭を打ち、竹や柴を絡ませ、水をせき止めたり、流れの勢いを弱めたりするものです。一首で詠まれた谷川は、柵(しがらみ)という言葉から流れは緩やかでなく、せきとめるほどに木の葉が留まっていると読み取れます。山を吹き抜ける風によって川面に降りたまった散紅葉は 柵(しがらみ) となり、色鮮やかな晩秋の景が広がります。流れをせきとめる 柵(しがらみ) は、人によって造成されるものでなく、風の力によって破れやすい木の葉を自然にせきとめ、造られたという視点が清新です。山を吹き抜ける風は冷たく、辺りの空気も凛として感じられます。
川面の散紅葉の見立てによって、秋の名残と冬の気配を鮮やかに詠んだ一首を書で表しました。