浮舟が宇治の邸から突然行方知れずとなり邸内は騒然となりました。
浮舟が母に書き残した「鐘の音の絶ゆるひびきにねをそえて わが世つきぬと君に伝えよ」と詠んだ歌から入水したものと思われました。
浮舟の侍女と侍従は浮舟の母を説得し、浮舟の亡骸のないまま浮舟の葬送が営まれました。
薫は、母女三宮の病気祈祷のために石山寺に籠もっており、葬送がすんでから知らせを受けました。
石山寺から帰京した薫は宇治に行き、浮舟の侍女から一部始終を聞き身の不運を嘆きます。
また、自分の至らなかったところも思い四十九日の法要を手配します。
秋の深まる頃、薫は夕暮れに蜻蛉がはかなげに飛び交う様に重ね合わせ、儚く世を去った宇治の大君、浮舟のことが回想されるのでした。
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「源氏物語 28~54:Genjimonogatari 28~54」カテゴリーアーカイブ
「源氏物語絵巻 第五十一帖 浮舟」
“Genji Monogatari Emaki no.51 Ukifune”
「橘の小島の色はかはらじを このうき舟ぞゆくへ知られぬ」
橘の小島の常緑は変わることはないでしょうが、水面に浮かぶ小舟のような私の身はどこに漂っていくのでしょうか
匂宮は浮舟を小舟で宇治川を渡って対岸の家に連れ出します。
雪が降り積もった宇治川で、匂宮は小島の常緑の緑に寄せ浮舟への変わらぬ心を伝えます。
上の和歌は匂宮に対する浮舟の返歌です。
場面は宇治川で小島を前に歌を詠み交わす情景を表わしました。
有明の月が空にかかり、水面を曇りなくきらきらと照らしています。
月の光と浮舟の優美な姿によって宇治川の趣が艶やかに匂宮には感じられます。
(12×13.5cm)
宇治に隠れて住んでいる浮舟。
浮舟は匂宮と結婚した異母姉の中の君に新年の挨拶の手紙を送りました。
その手紙の文面を見た匂宮は、薫が宇治に隠している謎の女性(浮舟)と気づきます。
匂宮は浮舟が中の君の妹であることは知りません。
匂宮の邸で見かけた浮舟と再開したいと密かに宇治を訪れます。
薫を装って浮舟に近づくのですが、匂宮の一途な想いに浮舟は次第に惹かれていきます。
「源氏物語絵巻 第五十帖 東屋」
“Genji Monogatari Emaki no.50 Azumaya”
京の三条あたりの小さな家で浮舟はひっそり暮らしています。
薫は浮舟の事情を知り、宇治に連れて行こうと浮舟の元を訪れます。
庭は草が生い茂っており、秋の冷たい雨が降り注ぎます。
(12×13.5cm)
大君亡き後、中の君は匂宮に迎えられ京の二条院で暮らしていました。
第四十九帖の宿木で登場した大君・中の君の異母妹である浮舟は中の君の元に預けられていました。
薫との縁談を考える浮舟の母の意向によるものです。
そこで浮舟は匂宮に見初められます。
難は逃れたものの、浮舟の母は三条の小宅へ浮舟を移します。
事情を知った薫は、浮舟を三条の住まいから宇治へ連れ出します。
浮舟は思わぬ成り行きに茫然とするばかりです。
場面は腰掛けて浮舟を待つ薫の前に広がる情景を描きました。
冷たい雨のそぼ降る設定は、宇治行きの結末を暗示するかのように思え、この場面を選びました。
「源氏物語絵巻 第四十九帖 宿木」
「源氏物語絵巻 第四十八帖 早蕨」
「源氏物語絵巻 第四十七帖 総角(あげまき)」
“Genji Monogatari Emaki no.47 Agemaki”
匂宮は宇治の中の君に逢いに紅葉狩に宇治を訪れます。
船を浮かべ、宇治川を上り下りして紅葉を楽しみます。
管弦の音色が姫たちのいる山荘にも聞こえてきます。
管弦の聞こえる船の屋根飾りには紅葉の枝が厚く葺かれて見事な光景です。
夕暮れ時に宴は佳境を迎えます。
皆が楽しむ中、匂宮の心は中の君のことが気掛かりで上の空です。
(12×13.5cm)
第46帖の椎本で八の宮が亡くなり、大君と中の君が遺されました。
第46帖に続き、薫は大君に再び胸中を伝えます。
大君は父の遺言に従い、宇治で生涯を送る決意が固く受け入れません。
薫は大君に以前(第46帖)から妹の中の君に匂宮との縁談を熱心に勧めていました。
匂宮も中の君に感心を寄せていました。
しかし、大君は中の君には薫との結婚を望んでいます。
大君の願いは叶わず、中の君は匂宮と結ばれます。
父の帝から重んじられている匂宮は自由な行動は許されません。
宇治に紅葉狩の折、匂宮は僅かな人と行く予定でした。
思いとは裏腹に大勢の供が従ったために中の君を訪ねられません。
匂宮の一行が立ち寄る段取りで準備を整えていたのに立ち寄らずに帰京したことに、大君は自分の危惧していたとおりとなり嘆きは深刻なものでした。
大君の匂宮への不信は薫に対しても向けられ、心労のあまり病の床につきます。
薫は宇治に留まり続け看病をします。
献身的な薫に大君は心を開くものの回復することなく亡くなっていまします。